取材を重ねていると全く別のテーマなのに多数の取材先から同じ問題提起を聞く機会がある。最近では「日本はこのままだと『デジタル植民地』になってしまう」という趣旨の危機感だ。

 取材先の問題提起に後押しされる形で、筆者は2つの記事をまとめた。1つは「データ時代の国際標準化競争」と題した記事だ。日本企業はデータ流通に関わる国際標準の仕様策定に積極的に関わるべきだという内容である。

 この記事は実のところ2018年11月に「世界が挑むトラスト」と題した記事の続きである。「トラスト」とは認証技術などによってあらゆるITサービスの信頼性を確保する仕組みだ。記事の背景にあるのは、日本はトラストのルール作りも海外にゆだねかねないという危機感だ。

 国際標準に注目したのは、IT分野の標準化に詳しい国内の関係者が口々に「日本の企業や政府は、海外に比べて標準化に対する認識が違う」と指摘しているためだ。どう違うのか。

 国際標準の規格と言えば国際標準化機構(ISO)などが知られている。ISOなどに参加する国内の企業関係者によると、海外の企業や政府機関の関係者は国際標準の会議に数多く参加しているのに、日本の企業や政府機関の参加は少ないという。

 国際標準となる仕様策定の活動に熱心なのはGAFAM(グーグル、アマゾン・ドット・コム、フェイスブック、アップル、マイクロソフト)などと呼ばれる米国の巨大IT企業だけではない。中国企業も標準化の国際会議に外部の人材を雇って大量投入している。

 特に中国のファーウェイは国際標準化に熱心だ。ファーウェイはIoT(インターネット・オブ・シングズ)向けに用途を限定した狭帯域ネットワーク「NB-IoT(Narrow Band IoT)」と呼ばれる仕様について、策定からチップやネットワーク技術の開発、普及をリードしたことで知られる。

 NB-IoTは通信速度は低速ながらも従来に比べて低消費電力で広いエリアをカバーする。電力を供給しにくい場所や機器でも長期間駆動や多数のデバイスを同時制御できる特徴があり、国内でも製品が登場している。

 無線LANの通信規格で知られる標準化コミュニティーである「IEEE 802.11」で、参加メンバーが最も多く所属している企業はファーウェイである。世界の通信や電子技術の標準規格を決めているIEEE(米国電気電子技術者協会)のなかでも、802.11は最大規模のコミュニティーという。

図●IEEE 802.11の所属企業別のメンバー数(2019年9月現在)
(出所:IEEE)
[画像のクリックで拡大表示]

 標準化機関は国や企業などの代表者が参加するものと、個人が参加するものがある。IEEE 802.11は個人が参加し、一定数以上の会議に出席しなければ投票権を得られない厳密なルールがある。

この先は会員の登録が必要です。今なら有料会員(月額プラン)が2020年1月末まで無料!

日経 xTECHには有料記事(有料会員向けまたは定期購読者向け)、無料記事(登録会員向け)、フリー記事(誰でも閲覧可能)があります。有料記事でも、登録会員向け配信期間は登録会員への登録が必要な場合があります。有料会員と登録会員に関するFAQはこちら