鴻海精密工業の創業者である郭台銘(テリー・ゴウ)氏が名乗りを上げ、産業界でもにわかに注目が高まった2020年1月の台湾総統選挙。郭氏は所属する対中融和路線の最大野党・国民党の予備選に出馬。ここで現・高雄市長の韓国瑜氏に敗れたが、その後も無所属での出馬を模索。立候補が有力視されていた。

 ところが一転。19年9月16日夜、郭氏は無所属で出馬しないことを表明。またも周囲を驚かせた。ただし郭氏は「政治への関与はやめない」としている。

 一方、独立志向の与党・民主進歩党(民進党)は、現職の蔡英文総統が再戦を目指す。郭氏が名乗りを上げた2019年4月の時点では、蔡総統の支持率は極めて低く、再選は絶望視されていた。ところが、最近の世論調査では蔡氏の支持率が急上昇し、対抗馬の韓氏を逆転したという報道が目立つ。

台湾総統の蔡英文氏(写真提供:猪飼 二郎)
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 まだ総統選まで約4カ月あり、流動的な要素もあるため、結果がどうなるかは分からない。しかし、一時は絶望的とみられた蔡氏の再選に可能性が出てきたことは確かだ。わずか数カ月で状況が一変した理由は、言わずもがな、最近の香港の情勢である。連日の報道を見て、「明日は我が身」と身構える台湾の人は多い。

 台湾は総統選が行われるような地域だが、日本を含む多くの国は台湾を国として認めていない。「台湾は中国の一部」という中国の主張を尊重しているからだ。台湾と中国の関係について、かつて台湾の李登輝・元総統は「特殊な国と国との関係」と言い、馬英九・元総統は「国と国ではなく、一種の特別な関係」と表明した。

 筆者はこの8月に台湾を旅行したのだが、そこでも台湾と中国の特殊・特別な関係を実感する出来事があった。

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