理化学研究所のスーパーコンピュータ「京」の後継機(通称「ポスト京」)の製造が2019年度にも始まる。富士通がポスト京向けに開発したCPU(中央演算装置)の仕様を公表し、目標としてきた「消費電力30~40メガワットで京の最大100倍のアプリケーション実効性能」の達成にメドがついた。

スーパーコンピュータ「京」
(出所:理化学研究所)
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 文部科学省および内閣府での中間評価を2018年内に終え、理化学研究所がポスト京の製造準備に入る見通しだ。文科省は2019年度の概算要求に、ポスト京の開発費205億9200万円を盛り込んだ。

 国費1100億円と民間投資200億円の合計1300億円を投じる計画のポスト京は、2021年度の運用開始を目指す。アプリケーション実効性能は現在の世界1位である「Summit」(米IBM製。設置場所は米オークリッジ国立研究所)の8倍程度に達する見込みだ。世界トップクラスの計算容量を生かして大規模な科学技術計算や人工知能(AI)の推論処理などを多数実行できれば、日本の社会や産業に貢献する成果を得やすくなる。

 システム開発と並行してアプリケーション開発に取り組むポスト京のプロジェクトでは、重点活用分野として創薬や予防医療、複合災害予測、気象予測、エネルギーの有効活用、新材料創出、設計・製造革新などが挙がる。頻発する激しい自然災害が不幸にも人命を奪い、社会インフラの脆弱性を白日の下にさらした今、ポスト京には開発費や運用費に見合う社会貢献が期待される。

CPUの設計で革新

 その一方で、日本のIT業界はポスト京をどう生かすべきだろうか。理化学研究所の松岡聡計算科学研究センター長は「日本の半導体の復活につながることを強く期待している」と話す。富士通が開発したCPU「A64FX」の用途としてスパコンはごく一部に過ぎず、同じCPUがクラウドに大量に置かれたり、派生品が自動車などの「エッジ」側の機器に入ったりする未来を松岡センター長は描く。

 ポスト京のCPUは、プログラムがCPUを動かすための仕様である命令セットアーキテクチャーこそ英アーム(Arm)の標準的なものだが、どのような回路で実現するかという内部構造は富士通の独自開発だ。コアを13個ずつグループにしてHBM2形式のメモリーを接続する構成も独特。幅広い処理に対応できる汎用CPUながら、単位消費電力当たりの演算性能はGPU(画像処理プロセッサ)並みで、単位消費電力当たりのメモリー転送速度はGPUを超えるという。

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