イノシシ撃退やダイエット支援など、少し風変わりなIoT(インターネット・オブ・シングズ)活用事例が増えてきた。IoTと言うと産業機械の稼働状況の可視化や故障予測などで生産性向上につなげる製造業での活用のイメージが強いが、地方自治体やサービス業においても、様々な目的でIoTを駆使する事例が広がりつつある。

 「ここ数年、島でイノシシが急増している。本島から海を泳いで渡ってくるようだ」――。

 長崎県の西方約100キロメートルにある島々からなる五島市。五島市では12年ほど前は観測していなかったイノシシが年々増え、農作物を荒らす被害が出ているという。歩行中や運転中に突然飛び出してくることもある。

長崎県の五島市でここ数年急増したイノシシ
出所:長崎県五島市
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 農林水産省によれば、2016年度の野生鳥獣による農作物の被害金額は約172億円。野生鳥獣に頭を悩ませる自治体は多い。五島市もその一つ。もともとイノシシが出没する島ではなかったため、専門の猟師がいるわけでもなく、自治体の担当者が捕獲するなど対策に苦戦していた。

 そこで考えたのが、IoTの活用だ。イノシシを効率的に捕獲すべく、センサーを使い、イノシシの出没状況や罠の設置場所などを地図情報システム(GIS)上に可視化する取り組みを始めた。日立製作所やNTT西日本などと連携して進める。

捕獲数は5倍以上に

 五島市では2種類のセンサーを使う。その一つが「出没検知センサー」だ。イノシシが主に活動する山と、人の暮らす地域の境界にカメラを設置。赤外線センサーがイノシシを検知すると画像を撮影し、自治体のサーバーに送信する。イノシシが出没しやすい場所を把握して捕獲用のオリを設置できるほか、出没状況をヒートマップで表示することも可能だ。

イノシシの出没状況や罠にかかった状況などをマップ上に示す
出所:日立製作所
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 五島市が2017年11月から2018年2月まで検証したところ、前年同時期と比較して約5.4倍となる163頭のイノシシを捕獲できた。「イノシシが出没しやすい場所を地図上に可視化して的確な場所にオリを設置できるため、かなり効率的に捕獲できるようになった」(日立製作所のサービス&プラットフォームビジネスユニットの荻野啓ネットワークシステム第3部部長)。

 もう一つのセンサーが「捕獲検知センサー」だ。イノシシがオリにかかり、罠が作動するとメールを送信。マップ上の罠のアイコンも色が変わりイノシシを捕獲したことが示される。「この地点に設置したオリで捕まっている」という情報を元に、自治体の担当者がイノシシを回収しに行ける。

 従来は担当者がオリの設置場所を巡回してイノシシが捕まっているかどうかを目で確認していた。このため、時間がかかるうえ、回収用の道具を取りに戻るなど無駄も少なくなかった。現在はセンサー情報を元に、イノシシが捕獲されたオリだけを確実に巡回できるようになった。

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