「沖縄美ら海水族館」(沖縄県本部町)や「海遊館」(大阪市)など、いまや人気の集客施設となった水族館。そうした水族館ブームをけん引してきたのが、「葛西臨海水族園」(東京都江戸川区)だ。その葛西臨海水族園が今、転機を迎えていることをご存じだろうか。東京都が既存施設の隣に、最大276億円をかけて新築し、水族園機能を移転する計画を進めているのだ。日本建築学会や、既存施設の設計者である谷口吉生氏は既存の保存活用を要望している。一方、都は「まだ既存施設について検討できない」としており、施設の行方は不透明だ。

東京都江戸川区にある葛西臨海水族園について、都が見直しを進めている。写真は1989年竣工時に撮影(写真:三島 叡)
[画像のクリックで拡大表示]

 葛西臨海水族園は、平成元年(1989年)の10月10日に開園した。都立葛西臨海公園内にある約8万6000m2の敷地に、延べ面積約1万3600m2の規模で、総建築費約88億円をかけて建てられた。設計は谷口建築設計研究所が手掛け、90年に毎日芸術賞、91年に建築業協会賞(BCS賞)、94年に公共建築賞をそれぞれ受賞している。

中央に、水族園を象徴するガラスドームが立ち上がっている。谷口吉生氏によれば、新築当初から北側に増築を想定した計画だった(写真:三島 叡)
[画像のクリックで拡大表示]

 目玉は、マグロが悠々と泳ぐ高さ20m、2000トンのドーナツ形大水槽だ。他にも、非常に軟弱な地盤を円形のプランにすることで構造的に安定させたり、アクリルガラスの現場接着を採用したりするなど、当時としては挑戦的な技術を採用した施設だった。子供だけでなく大人も楽しめるコンセプトを掲げた点も異色だったといえる。2002年ごろからは年間入園者数が150万人程度で推移しており、今なお人気の水族館だ。

 開園から30年近くたった17年、都は有識者を集めた「葛西臨海水族園のあり方検討会」を設置した。18年10月に検討会が報告書を取りまとめ、それを受けて都は19年1月、基本構想を発表。既存施設の老朽化や、バリアフリー化の困難さなどを理由に、建物を新築することと、既存施設は水族園機能を移設後に、施設の状態などを調査したうえで在り方を検討することを明記した。

現在は、バックヤードに業務用エレベーターが1基あるのみ。ベビーカーや車いすを使う来館者は、そのエレベーターに乗って館内に入る(資料:東京都)
[画像のクリックで拡大表示]

この先は会員の登録が必要です。有料会員(月額プラン)は初月無料!

日経 xTECHには有料記事(有料会員向けまたは定期購読者向け)、無料記事(登録会員向け)、フリー記事(誰でも閲覧可能)があります。有料記事でも、登録会員向け配信期間は登録会員への登録が必要な場合があります。有料会員と登録会員に関するFAQはこちら