日本の土木史に残る黒部川第四発電所(通称、黒四)の建設工事――。

 北アルプスの難攻不落の断層破砕帯を資材運搬用のトンネルで突破し、黒部峡谷にダムを築く。戦後の電力不足に悩む近畿地方の経済復興を支えたその偉業は、1964年に「黒部の太陽」として小説化。以降、同名の映画や演劇、テレビドラマなどで繰り返し描かれてきた。

 黒四の建設は土木史のみならず、昭和の社会経済史を彩る金字塔の1つになっている。

黒部ダム。黒部川第四発電所の建設工事では、黒部峡谷のダム建設地へ資材を運ぶために北アルプスを貫くトンネル工事を計画。掘削中に断層破砕帯に遭遇し、日本の土木史に残る難工事となった(写真:安川 千秋)
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 それから、およそ60年。この令和の時代に、日本の土木界が再び破砕帯との闘いに挑む可能性が高まってきた。JR東海が進めるリニア中央新幹線の建設がそれだ。

 東京・品川と名古屋を結ぶリニアの建設は、付近に複数の活断層が走る南アルプスと中央アルプスを長大トンネルで貫く。ルート上には破砕帯の影響による脆弱な地質が広がっている可能性があり、トンネル工事の難航を予測する向きは少なくない。

 実際、国土交通省がリニアの南アルプスルートの付近で建設を進めている中部横断自動車道は、もろい地盤の影響で工事が難航。同省が建設する六郷インターチェンジ(IC)―富沢IC間(延長28.3km)の全線開通時期は、当初の2017年度内から20年内へと3年ほど延期された。

中部横断自動車道の建設工事の様子。トンネル掘削に伴う切り羽の崩落などが相次いでいる(写真:国土交通省甲府河川国道事務所)
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 中部横断道のルートの付近には、日本有数の活断層帯である糸魚川―静岡構造線などが走り、その影響で地盤がもろくなっている箇所が多い。国交省はトンネル掘削中にも新たな破砕帯を確認。同省が建設するトンネル19カ所のうち、18カ所で施工中に崩落が発生している。

 国交省は「もろい地山の出現割合が想定以上に高い」と説明し、支保工の2重化など補強策を実施。当初は2004億円としていた総事業費を3回にわたって増額し、現在は1000億円以上多い3154億円を見込んでいる。

中部横断自動車道の国土交通省の担当区間では、トンネル内の崩落や断面変形などが多発。トンネル全19カ所のうち18カ所で崩落が発生した。表は2018年6月末時点の状況。国交省が18年7月に地元自治体と開いた連絡調整会議の第3回会合で報告した。脚注の第2回連絡調整会議は16年11月に開催した(資料:国土交通省甲府河川国道事務所)
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