2018年6月、週末の昼下がり。記者は中国ITの取材で北京を訪れていた。北京市内の十里堡地区にある大型の商業ビルに入り、エスカレーターで地下1階に向かう。そこにあるのは、中国最大手の電子商取引(EC)企業、アリババ集団のグループ会社が経営する食品スーパー「盒馬鮮生(フーマー)」の北京1号店である。

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北京市内の十里堡地区にある、アリババの食品スーパー「盒馬鮮生」の北京1号店(左)と盒馬鮮生のロゴ(右)

 ECサイトで10年以上の歴史を持つとはいえ、アリババがリアルの小売業に参入してからの歴史は浅い。盒馬鮮生の1号店が上海で産声を上げたのは2016年だ。それでも盒馬鮮生の店舗は市民の熱狂的な支持を集め、わずか2年ほどで中国の主要都市に50店舗以上を展開するほどに急成長した。アリババの馬雲(ジャック・マー)会長が掲げる「新小売」戦略の象徴的存在として国内外から注目を集めている。

熱気に包まれる十里堡の店舗は、新旧交代の象徴

 今回訪れた北京・十里堡の店舗は約1年前の2017年6月に、盒馬鮮生の10店舗目、北京では最初の店舗として開業。現地報道によると1万平方メートルほど(バックヤードを含む)もあるという店内には、テーマパークと見まがうほどの大勢の買い物客が集まり、ただならぬ熱気が充満していた。

 イートインコーナーには、魚介類売り場のいけすで選んだ魚やカニ、ザリガニなどを調理してもらい、大人数でテーブルを囲む家族や友人などのグループがそこかしこに見られた。1階の裏口へ回ると、スマートフォンのアプリで注文を受けた商品を客先へ届けるバイク便の配達員たちが数十人ほどいた。荷台に発泡スチロールの箱をくくり付けたり慌ただしくバイクにまたがって走り出していったりしていた。

 この北京・十里堡の店舗は単にアリババの新小売戦略の快進撃を示すだけでなく、それ以上の大きな意味があると感じている。この店舗、実は開店する前年秋までイトーヨーカドーの北京1号店だったのだ。

 イトーヨーカドーは中国企業と外国企業の合弁による小売業チェーンとして中国で最初に認可された、中国の外資系スーパーの草分け的存在だ。少なくとも2000年代までは、カルフールやウォルマートとともに外資系スーパーの主要プレイヤーの一角として中国小売業のけん引役を担ってきた。しかしここ1~2年でそうした外資系スーパーに取って代わり、ECで力を付けてきたアリババやテンセントなどが中国小売業の新たな主役に躍り出た。十里堡の盒馬鮮生はそうした新旧の世代交代の象徴的な存在と記者の目には映ったのだ。

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