二酸化炭素の排出量削減が不十分なために気候変動が進み、降雨量が大幅に増加した近未来の東京は実際にこうなるのかもしれない――。2019年7月19日から公開中の新海誠監督のアニメ映画「天気の子」を見て受けた第一印象は、理想郷とは正反対の「ディストピア」だった。

 自然災害をテーマに扱った少年と少女を主人公とするファンタジーである点は、同監督の前作「君の名は。」に似ている。ただし、前作よりも現実感を色濃く反映した作品だったように感じた。19年の梅雨が例年よりも長かったことに加え、建設メディアの記者である筆者にとって豪雨や浸水の被害、さらに雨量増加の原因とされる地球温暖化は日々の取材対象で、身近な問題として認識していることが影響したのだろう。

JR田端駅の南口付近。アニメ映画「天気の子」の設定では、主人公の一人である天野陽菜が住むアパートの最寄り駅だ。劇中でこの辺りの景観の描写は重要な場面の背景となるだけでなく、東京都内の浸水の被害拡大を印象付ける役割も果たしている。2019年7月26日撮影(写真:日経コンストラクション)
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*以下、映画「天気の子」と「君の名は。」の内容に関する記述が含まれています。

 映画の舞台は雨が降り続き、激しさを増していく21年以降の東京都心部だ。主人公の一人の天野陽菜(声:森七菜)は一時的な晴天をもたらす超能力を持つ「100%の晴れ女」だが、気候変動を止めるには至らない。映画の終盤で東京は東部が水没し、ベネチアを巨大化したような“水の都”と化す。

 「君の名は。」で被災した岐阜県山間部の架空の町である「糸守町」が廃虚になるのとは対照的に、「天気の子」での東京は浸水被害が長期化しても首都として存続する。劇中では重機が稼働する河川工事の現場がちらりと映った。小説版の「天気の子」によれば、中心部が西に移った東京を守るため、利根川や荒川で新たに大規模な堤防の建設が進んでいる。現実の世界でも10年代に鬼怒川などで頻発した水害のたびに対策工事で建設技術者が大活躍したことからすると、いかにもありそうな設定だ。

 映画は東京の水害を必ずしも悲劇とは位置付けていない。被災した都民の一人(声:倍賞千恵子)は、下町にあった戸建て住宅を水没で失って高台への移転を余儀なくされながらも、達観した様子で現実を受け入れていた。

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