全国知事会は2019年7月23日、大雨で浸水する恐れの高い土地の売買時に、そのリスクの説明を不動産会社に義務付けるよう国に求める提言を採択した。宅地建物取引業法の改正を呼び掛けており、今後の国の動向が注目される。

「来たるべき大規模災害に備え教訓に基づき行動するための提言(案)~平成30年に発生した災害の検証結果を踏まえて」の一部を抜粋。「1.住民の適切な避難行動につなげて命を守るために」で宅建業法の改正に触れている(資料:全国知事会)
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 現状の宅建業法では、一部の災害危険情報を住宅購入者に伝えるよう義務付けている。宅地造成等規制法の造成宅地防災区域や土砂災害警戒区域、津波災害警戒区域などだ。ただし、大雨による浸水リスクについては、一部の熱心な不動産会社が購入者に伝えているだけで、ほとんどの場合は周知が徹底されているとは言えなかった。

 18年7月に発生した西日本豪雨を受けて、岡山県が被害を検証し国への要望を提示したことがきっかけとなった。災害リスクの周知徹底不足が、避難の不十分さにつながったことを課題に挙げ、宅建業法の改正を提案したのだ。幸い、洪水ハザードマップなどは全国的に整備が進んでおり、それを導入するだけでよい。災害時に適切な避難行動を促進するだけでなく、そもそも危険な地域に住みたくないという住民に選択肢を与える効果も期待できる。

 私有財産である民地の災害を防ぐために、国や自治体が積極的に関与することは難しい。例えば、2001年に土砂災害防止法が施行されたものの、民地の警戒区域などの指定がなかなか進まなかった。風評被害や価格下落などの反発を恐れて、自治体の指定への動きが緩慢だったことが原因だ。

 ただし、毎年のように大雨で民地が被害を受け、多くの命が奪われる現状を見ると、これまでの施策だけでは不十分であることが露呈している。もはや「民地だから関与しない」という考え方は限界があるのではないか。

 人口減少・高齢化の波が到来する時代に、国は生活拠点などに福祉・医療施設や住宅を誘導し、地域の公共交通ネットワークの再編を行う「コンパクト・プラス・ネットワーク」を推進している。災害危険地を除いて集約させるように運用指針で触れており、将来の国土計画を考える上でも民地への関与は重要な施策のはずだ。

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