「権限、裁量、支持――。ビジネスパーソンが業務でストレスを感じるのは、この3つのうちのどれかが、自分の仕事を進めるうえで十分に与えられていないときなんですよ」。

 ある企業の元CIO(最高情報責任者)から、職場ストレスの発生原因についてこう聞いたとき、私はなるほどと膝を打った。今までもやもやしていたものをスッキリと説明してもらえた気がした。

 元CIOの主張はこうだ。3つの要素のうち、権限は「何かを決定する権利」の意味。企業の中では限られた人しか行使できない。これに対して裁量は「何かを達成するためのやり方を選択する権利」だ。つまり、裁量は現場の担当者でも新人でも持っている。

 記者の仕事で例えるなら、この「記者の眼」というコラムの存続や原稿の掲載について決定権(権限)を持っているのは編集長だが、記事のテーマや内容については記者が裁量を持っていることになる。

 権限が増えれば裁量も増えるかというと、そうとも限らない。一般に、役職が上がって権限が大きくなるにつれて対処すべき課題も大きくなり、自分1人だけで決められること(裁量)が少なくなる傾向がある。

 最後の支持は、社内外の関係者から有形無形を問わず支援を得ることだ。上司や部下から評価されることはもちろん、顧客から感謝されることやライバル企業から一目置かれることも支持のうちだ。

 もちろん、権限、裁量、支持の全てを高いレベルで満たすことは難しい。しかし、足りない要素を他の要素が補うことで、ストレスは緩和される。私の例で言えば、記事の掲載可否の権限はないが、誰に取材して何を執筆するかの裁量が与えられているのでストレスがそれほど蓄積されることはない。加えて読者から記事に対する支持を得られれば、最高のストレス解消になる。

 言うまでもなく、権限、裁量、支持が十分に与えられずにストレスが過度に蓄積された場合、多くのビジネスパーソンは仕事に対するモチベーションが下がる。部下のモチベーションが下がれば組織のパフォーマンスが落ちるので、上司やチームリーダーはストレスの少ない職場環境を作ることが求められる。ITエンジニアは一般平均の約1.8倍も高ストレスな状態にあるという調査結果があるので、IT関連のリーダーは特に気を配る必要がある。

この先は会員の登録が必要です。今なら有料会員(月額プラン)が2020年1月末まで無料!

日経 xTECHには有料記事(有料会員向けまたは定期購読者向け)、無料記事(登録会員向け)、フリー記事(誰でも閲覧可能)があります。有料記事でも、登録会員向け配信期間は登録会員への登録が必要な場合があります。有料会員と登録会員に関するFAQはこちら