「僕は背が小さく、足も短い。ZOZOTOWN(ゾゾタウン)にある約65万アイテムから探しても、自分の体に合う商品がなかなか見つからない。それがコンプレックスで悩んできた」

 ファッションのネット通販サイト「ZOZOTOWN」を運営するスタートトゥデイ(2018年10月1日に社名をZOZOに変更予定)の前沢友作社長は、2018年7月3日に開催したPB(プライベートブランド)商品「ZOZO(ゾゾ)」の記者会見で、こう告白した。

7月3日に開かれた、PB商品「ZOZO」の会見に登場した前沢友作社長。めったにメディアの前に現れない前沢社長が、この日は自身の体験や悩みを含め、PB参入のきっかけや意気込みを自ら語った
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 メディア席の最前列に陣取った筆者はその話を聞いて、他人事とは思えなかった。筆者も子供のころから40代になった現在に至るまで、前沢社長と同じ悩みを抱えて生きてきたからだ。

 この日、前沢社長が発表したPBの新商品であるメンズの「ビジネススーツ」と「ドレスシャツ」を着て登壇した男性社員らと並ぶと、前沢社長は背が小さいのが一目で分かる。前沢社長の左に立つ社員は対照的に体も(髪型も)大きい。「君も色々な問題を抱えてそうだね」。前沢社長はそう語りかけ、会場の笑いを誘った。

PBの新商品である「ビジネススーツ」と「ドレスシャツ」を着て登壇したスタートトゥデイの社員らと並ぶ前沢社長(右から2番目)
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 スタートトゥデイは1998年5月の創業から今年で20周年。年商8000万円で始まったネットベンチャーは、2018年3月期に売上高2700億円を稼ぐまでに成長した。ネットバブル崩壊後、次々と消えていったネットベンチャーを尻目に、数少ない勝ち組となったスタートトゥデイ。大成功を収めて億万長者になった前沢社長だが、体型の悩みはお金で解消できるものではない。

創業から20年で年間売上高が2700億円の企業に成長。ネットベンチャーの勝ち組だ
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 「パンツの裾上げをするだけで、何だか恥ずかしい気分になる。そのせいか、店舗から足が遠のいていった。創業当時のことは忘れてしまったが、だから洋服のネット通販を思いついたのかもしれない」

 それから20年がたち、前沢社長はスタートトゥデイを次のステージに進めると決断した。自身の体験から「一人ひとりに合った洋服があればいいじゃないか。既製のS・M・Lサイズに体を合わせる時代から、服を人に合わせていこう」と考えた。7~8年前のことだ。そこから秘密裏に試行錯誤を続け、2018年1月末に最初のPB発売に至った。テナントと競合することにもなるPBをZOZOTOWNの家主が自ら始めた。新たなSPA(製造小売り)の誕生だ。

 筆者は小柄な前沢社長より、さらに背が低い。「全てあなたサイズを標榜するPBのZOZOを試さないわけにはいかない」。会見に出席している記者の身でありながら、筆者は個人的な思いを強くし、すぐにビジネススーツを注文すると決めた。

 悩むほどの価格でもない。スーツとシャツのセット、しかもオーダーメードで、お試し価格が2万4800円(税込)。背が小さい筆者は体に合うスーツやシャツがなく、この10年ほどはオーダーメードのスーツとシャツを専門店で購入していた。当然、既製品よりずっと高い。それでも仕事に欠かせない「戦闘服」の購入と割り切り、大きな出費を我慢してきた。それを思えば、2万4800円なら試す価値は大ありだ。迷いはなかった(定価は4万4800円になる予定)。

 販売開始は会見当日の午後6時。買うと決めた以上、この日は家路を急ぎ、いの一番に注文しようと考えた。

 ここから先は、7月3日から23日現在までの20日間に筆者が体験した、採寸から注文、PB商品の受け取り、着用までの記録であり、喜怒哀楽の話である。「背が小さく、体に合う服がなかなか見つからない」という切実な悩みをずっと抱えて生きてきた筆者にとって、このテーマを一言では語り尽くせない。長文になることをお許しいただきたい。

 なお、スーツとシャツのセットは8月上旬以降の出荷開始なので、この原稿を書いている段階ではまだ届いていない。しかし、ZOZOのTシャツ1枚とデニム2本は既に手元にある(なぜデニムが2本届いたのか、詳しくは後述する)。

 最初に断っておくが、そもそもファッションに正解はない。色の好みもサイズ感も、本人が格好いいと思えば、それでいい。この後の記述は、筆者の個人的な好みが多分に含まれていることを考慮のうえ、読み進めてほしい。

いち早く入手したZOZOSUITを1カ月も放置

 午後6時の発売開始に向けて、少しでも早く家に帰る必要があった。それは、筆者がまだ採寸用のボディースーツ「ZOZOSUIT(ゾゾスーツ)」で自分の体型データを計測していなかったからだ。体型データがないことには、何も始まらない。

 ZOZOSUITがなかなか届かないと不満を漏らす人が多いなか、筆者は2018年4月末にいち早く入手できていた。2017年11月にZOZOSUITの無料配布申し込みが始まった直後に注文したからなのか、4月27日に発送開始のメールが届いた翌日には「発送手続き完了」のメールが送られてきた。そしてゴールデンウィーク前にはZOZOSUITを手にしていた。筆者はこの時点で、ほかの人たちにも届き出しているのだろうなと思い込んでいた。

 ZOZOSUITは予約開始の後に仕様変更を余儀なくされ、出荷が大幅に遅れていた。筆者も届くのが早かったとはいえ、5カ月も待たされ、すっかり気持ちは冷めていた。だから早々に受け取っておきながら、封も切らずに放っておいた。この時点ではまだ、ビジネススーツは販売されていない。特に欲しい商品がなかったことが、置きっぱなしにしていた大きな理由だ。

 そんななか、5月末に編集部内でZOZOSUITの話題が出た。みんなまだ届いていないというではないか。筆者は1カ月も前に受け取っていたのに。翌日、現物を編集部に持っていき、「日経 xTECH分解班」に手渡した。

 普段はスマートフォンやAI(人工知能)スピーカーなどを分解しているメンバーらは早速、ZOZOSUITの擬似分解を始めた。ZOZOSUITの特徴的な白い水玉模様(ドットマーカー)の仕組みを探るためだ。封を切らず、新品のまま家に放っておいたことがこんなところで役立った(ちなみに、下記の記事中に登場するKデスクが筆者である)。

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