中国のキャッシュレス化は、今や至るところで話題になっている。日本でもQRコードの規格統一の動きが進むなど中国に追いつけ追い越せと言わんばかりの過熱ぶりだ。

 6月中旬に記者が中国に出張に行った際も、キャッシュレスの進化を目の当たりにいた。記者は、ローカルマーケットや屋台が好きで、出張中もよく使ったが、そうした場所も含めて決済でスマホやクレジットカードが使えないということは1度もなかった。

「QRコード決済」は中国のキャッシュレス文化を表す代名詞となっている
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 ここまでなら報道などで知っていたこともあり、そこまで驚かなかった。さらにいえば、QRコードという方式の差はあれど、日本でもこの点では大きく水をあけられているという感じも受けなかった。当然日本ではクレジットカードが使えない店舗はまだあるし、電子マネーも同様だ。一方、モバイルSuicaをはじめ、楽天Edyやnanaco(ナナコ)、QUICPay(クイックペイ)やiDといった電子マネーなど各種「キャッシュレスの道具」はそろっている。そろいすぎているといってもいいかもしれない。つまり、QRコードがなくても、キャッシュレス実現への道はほとんど整っているともいえるのだ。

欠けているピースはQRなのか

 日本の決済において、欠けているピースは手法ではないと感じた。それは、いみじくも日本に帰国してみて改めて感じたことだった。中国から帰国後、記者はあえて現金をなるべく使わず、スマホを使ったQUICPayと、交通系電子マネー、クレジットカードのみで生活してみた。思いのほか、ほとんど不自由しなかった。都心であればこそかもしれないが、1週間ほど過ごしてみて、現金が必要となった回数は、両手で足りるほどだった。飲み会の割り勘代、自治体でお願いしているファミリーサポート(ベビーシッター)への支払い、自販機、近所のクリーニング店への支払い、うどん屋での支払い、香典、だった。お店については、クレジットカードが使えないケースがある一方、外食店舗ではクレジットカードをはじめ、各種電子マネーに対応している店も増えている。自販機も電子マネーに対応しているものも増えているので、記者が使った機械がたまたまそうでなかったというだけだ。

 キャッシュレス生活で面白いことも分かった。飲み会の割り勘代、ファミリーサポート(シッターさんにその場で手渡し)、香典、に共通していることがあったのだ。どれも近しい人とのお金のやり取りで、いわゆるCtoCに近い。中国はこのCtoCの金銭のやりとりで、アリババ集団の「支付宝(アリペイ)」やテンセントの「微信支付(ウィーチャットペイ)」が頻繁に使われている。特に、コミュニケーションサービスから始めて、アリペイより早く友達への送金を開始したウィーチャットが友達とのやり取りに多く使われているようだ。

 中国人の友人は言う。

 「元々ウィーチャットペイを使うようになったのは、お年玉だった気がします。友達同士で10元程度をメッセージと一緒に送り始めたのです」

 明けましておめでとう!という新年の挨拶とともに少額を送るようになったのだという。友人は続ける。

 「その延長で、最近はちょっとしたアンケートや調査に答えてもらった友人に数元送るといったことは普通になりました。以前は、ありがとう!とお礼を言うだけでしたが」

 そのほかにも、記者がこの1週間で現金を使った「香典」についても、キャッシュレスが進んでいるという。

 「今でも儀式感を重視する年配の方は現金ですが、若い人ほどお香典やご祝儀もお悔やみやお祝いのメッセージを添えてウィーチャットで送る人が多いですよ」

 もらったお金はウィーチャットペイ内の財布に貯め、タクシーや露店での支払いといったBtoCで消費。お財布に残額がなくなれば、ウィーチャットペイ上に登録してあるデビットカードやクレジットカードで支払うという流れだ。コミュニケーションと紐付いた金銭のやり取り、それを使うBtoCの利用シーン、というエコシステムがしっかりでき上がっているのだ。

 事業者側からみても同じだ。アリババやテンセントはBtoCの利用シーンとなる、シェアバイクや出前、配車といったサービスに次々と投資し、収益機会を拡大させている。その投資を決済機能で回収し、投資と回収をシームレスにつなげているのだ。ある投資家は「出前、シェアバイク、配車と投資競争をしているアリババとテンセントだが、飽くまでそれらは回収エンジンである決済機能を使わせるためのマーケティング費用と考えている向きがある」と話す。

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