成田空港のチェックインカウンター。それまでにこやかに応対してくれていた航空会社の地上スタッフの顔が急に雲った。彼女は私にこう告げた。

 「お客さまはESTA(エスタ)を取得していないので、航空券が発券できません」

 6月上旬、米アマゾン・ドット・コムのイベント「Amazon re:MARS」取材のため、米国ラスベガスに出張した。その1週間前、東南アジアの配車大手グラブの取材のために出張したシンガポールから帰国したばかりだった。米国出張に向かう直前、6月13日号の「日経コンピュータ」の編集後記で「これまで30カ国以上を訪れましたが、シンガポールは初めてで…」と海外経験の豊富さをちゃっかりアピールした直後、事件は起こった。

 ESTAを取り忘れていたのだ。米国によく渡航する方ならおなじみだと思うが、ESTAとは米国の電子渡航認証システムのことである。日本を含むビザ免除プログラムに参加する国の国籍を持つ人が90日以下の短期商用・観光目的で米国に入国する場合、米国行きの飛行機に登場する前にESTAの取得が義務付けられている。このESTA、遅くとも出発の72時間前までにウェブサイトから申請することが強く推奨されている。1回取得すれば2年間有効だが、私はちょうどパスポートを更新したばかりで、ESTAも新たに申請しなければならなかった。だが忙しかったので、うっかり失念していた。

 出発当日、校了前のゲラ(校正刷り)をかばんに突っ込み、成田エクスプレスに乗るため、港区虎ノ門にある日経BPから東京駅に向かうタクシーに飛び乗った。新橋辺りでESTAを取得していないことにはっと気が付いた。あわててスマートフォンで「ESTA 取得」と検索し、検索結果の上位に表示されたサイトに、氏名やパスポート番号など必要事項を入力した。申請料は89ドルだった。「あれ?こんなに高かったかな」と一瞬迷ったが、タクシーは東京駅丸の内北口の手前まで来ていた。タクシーを降りたらダッシュしなければ、成田エクスプレスに乗り遅れてしまう。迷いを振り切って申請ボタンを押した。「これで大丈夫。経験上、ESTAは申請すればすぐ承認されるはずだ」と自分に言い聞かせ、スーツケースを抱えて東京駅の階段を駆け下りた。成田エクスプレスにはぎりぎり間に合った。そのままESTAのことはすっかり忘れて、車内で仕事した。

 成田空港のチェックインカウンターで地上スタッフの女性からESTAが取得できていないと指摘されたとき、実のところ、何を言われているのかが分からなかった。私はきょとんとして「申請しました」と言い、申請サイトの送信ボタンを押した後で返ってきたメール文面を見せた。彼女は文面を読むと、残念そうにこう告げた。

 「間違える人が多いのですが、代行業者のサイトから申し込まれたようですね。公式サイトから申し込み直したほうがいいかもしれません」

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「ESTA 取得」のキーワードでGoogleを検索した画面の例。代行業者のサイトが多数表示される

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