先日、トヨタ自動車が管理職の2019年夏の一時金(賞与)を前年比で平均4~5%減らすと報じられた。同社の同年3月期の連結決算は、売上高が前期比2.9%増の30兆2256億円、営業利益が同2.8%増の2兆4675億円、純利益が同24.5%減の1兆8828億円だった。利益面では営業増益かつ最終減益という判断に悩む結果だが、賞与は業績に連動するものという考え方に従えば、やはり基準となるのは本業のもうけを示す営業利益だろう。だから、「同社は営業増益にもかかわらず、賞与を下げた」と解釈できる。

2019年3月期連結決算の説明に臨んだトヨタ自動車代表取締役社長の豊田章男氏(写真:日経 xTECH)

 賞与が減るのは、管理職だけではない。日本経済新聞によれば、非管理職の組合員平均についても、2019年夏の賞与は前年比で約10%下がることが同年春の労使交渉で決まったという。2018年冬よりは増えているし、賞与額を巡る労使交渉の方式が変わった影響もあるので、単純な比較は難しいのだが、従業員側から見れば厳しいという印象だろう。ちなみに、取締役や執行役員の年間報酬も当初想定よりも10%下げる。

 一連の報道を見聞きして筆者が最も腑に落ちなかったのは、経営側が賞与を減らす理由として、「危機意識を高めるため」「危機意識を共有するため」などを挙げていたことである。経営側が実際にそう発言したのか、それとも報道の段階でそのような解釈が加えられたのかは定かではない。しかし、「危機意識を高める」ために「ボーナスを減らす」というのは一見筋が通っているようで、よく分からない。

 もちろん、トヨタ自動車をはじめとする自動車業界が、これまでにない大変革を迫られていることは理解しているつもりだ。「GAFA(グーグル、アマゾン・ドット・コム、フェイスブック、アップル)」に代表されるIT企業との主導権争い、「MaaS(Mobility as a Service)」のようなサービスモデルへの移行、そして自動運転など最先端技術への巨額投資…。いずれも待ったなしの状況であり、経営者が会社全体の危機意識を高めたいというのは分かる。

 だが、その手段としてボーナスを下げるといわれると、「ん?」と思ってしまうのである。なぜこれから頑張ろうという時に、士気を下げるような施策に手を出さなければいけないのかという疑問が浮かんでくる。

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