プラットフォーム戦略は、革新的なテックカンパニーや巨大な顧客基盤を抱える大手企業の専売特許ではない。そう言わんばかりの情熱で、東奔西走する人物がいる。田島達也氏。大正12年創業の横浜信用金庫 業務推進部でプロジェクトリーダーを務める金融マンだ。田島氏は、全国の企業同士を結ぶ出会いの場を作り上げようと日本各地を飛び回っている。

 地域の信用金庫が全国規模のプラットフォームを運営する。言葉を選ばずに言えば、身の丈に合わない目標に聞こえるかもしれない。「確かに違和感があるかもしれないが、誰がやるかは大した問題じゃない」。田島氏は意に介さない。

横浜信用金庫の本店
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 事実、スタートは好調だ。2018年4月にローンチした「Yokohama Big Advance」には、サントリー、IHI、日揮、東レ、楽天、ソフトバンクなど、そうそうたる大手企業300社超が参画した。中小企業を中心とした地域の有料会員企業数は1500社。わずか2日で黒字ラインを超えた。

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 Yokohama Big Advanceは、企業間のビジネスマッチングを支援するサービスだ。例えば建設会社と工務店、メーカーと部品会社などをつなぎ、商談に発展させる。

 発想の出発点は横浜という土地柄にある。東京に近いものの意外と関わりは少なく、横浜だけに閉じたビジネス環境になっているそうだ。東京に本社を構える大手企業は、横浜の中小企業と接触する機会が少ない。一方、横浜の中小企業は東京の大手企業と結び付きを強め、新しい仕事を獲得したい。両者のニーズは合致すると踏んだ。その結果として、横浜の中小企業の活性化につなげることを狙う。

 田島氏が足で稼いで大手企業の参画を促し、営業店の担当者たちが中小企業の利用者を開拓していった。東京の大手企業と横浜の中小企業が1つの場に集うことで、新しい経済の流れを生み出す。

 とはいえ、「我々の顧客はあくまで横浜の中小企業」と田島氏は言い切る。そのことを象徴するのが料金体系だ。横浜信金の取引先である中小企業は月額3000円程度でサービスを利用するのに対し、大手企業に利用料はかからない。理由は明快。価値を提供するから料金を請求できるのであり、価値の提供先は地元の中小企業である、というのが田島氏の考えだからだ。

 実はビジネスマッチングを手掛ける金融機関の多くは、逆の料金体系を採用している。大手企業から料金を取り、中小企業は無償にする。中小企業に優しい料金体系に見えるが、大手企業に対して地元の中小企業を紹介するスタンスの表れなのだという。

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