このままでは第4次産業革命に乗り遅れる。こんな危機感を抱かせる調査結果をリクルートワークス研究所が2018年6月6日に発表した。

 第4次産業革命とは、内閣府の資料を引用すれば、「18世紀末以降の水力や蒸気機関による工場の機械化である第1次産業革命、20世紀初頭の分業に基づく電力を用いた大量生産である第2次産業革命、1970年代初頭からの電子工学や情報技術を用いた一層のオートメーション化である第3次産業革命に続く技術革新」。具体的には、IoT(インターネット・オブ・シングズ)やビッグデータ、AI(人工知能)、ロボティクスなどによってもたらされる変革を指す。

 リクルートワークス研究所は、約5万人を対象とした「全国就業実態パネル調査(JPSED)」の第3回調査で、「2017年は柔軟な働き方が広がり、女性とシニアの労働参加が進展した」と報告している。テレワークなどITを活用した就労形態の広がりによって、子育て中の女性が労働参加しやすくなるなど、働き方改革の成果を実感している職場も多いだろう。

 ただ気になった点がある。学習活動は減少しているのだ。リクルートワークス研究所はJPSEDを基に「Works Index」と呼ぶ5種類のインデックスから成る統計を出している。インデックスのうち、残業時間の減少や休暇取得に関連する「ワークライフバランス」のスコアは前年比で0.6ポイント上昇、「就業の安定」も同じく0.6ポイント上昇した。

 これらは労働環境が昨年より改善している状況を示し、「働き方改革の成果が表れているのではないか」とJPSEDを担当したリクルートワークス研究所の坂本貴志研究員兼アナリストは述べる。一方でOJT(On-the-Job Training)や自己啓発に関わるインデックスである「学習・訓練」は同0.5ポイント減少した。労働環境は改善したが、学びの機会や時間は減っているのだ。坂本氏はこの状況を働き方改革の「副作用」と表現する。

Work Index 2016(左)とWorks Index 2017(右)
出所:リクルートワークス研究所「Works Index 2017」
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 もう少し詳しく見ていこう。学習・訓練の値は次の4種類の構成要素(インディケーター)に関連する調査結果から導き出している。(1)難易度が高い、多様なタスクの仕事を任されている、(2)OJTの機会がある、(3)Off-JTの機会がある、(4)自ら学んでいる(自己啓発)――である。これらのうち、(1)は前年と変わらなかったが、(2)(3)(4)は前年と比べてそれぞれ0.7、0.4、1.0ポイント減少した。

 OJTについては、就労時間が短くなったためその機会も単純に減ったと解釈できる。Off-JT、つまり社外での研修などについても業務命令であれば就業時間に含まれるため、働き方や働く場所の多様化が進むのと並行して減少したと考えられる。しかし、(4)の「自ら学んでいる(自己啓発)」まで減っているのはどういうことか。リクルートワークス研究所によると、学習・訓練は正規・非正規といった雇用形態や年齢に関係なくあらゆる層で低下しているという。

 もっとも、自己啓発に関する活動に取り組む人はそもそも多くない。

 JPSEDでは自己啓発について、「あなたは昨年1年間(2017年1月~12月)に自分の意思で、仕事にかかわる知識や技術の向上のための取り組み(例えば、本を読む、詳しい人に話を聞く、自分で勉強する、講座を受講する、など)をしましたか」と聞いている。

 結果、2017年(n=50711)は「行った」が25.1%、「行わなかった」が74.5%だった。自分の意思で仕事のために学ぶ人は少数派である。この数少ない、自ら学ぶ意志を持つ人が働き方改革の名の下、残業が減り、休暇を取得しやすくなったにもかかわらず、2017年は2016年からさらに減少したのだ。

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