「視聴者の脳の反応を基に購買につながる効果的な広告を作成する」「脳の状態を把握して学習効率や睡眠の質を高める」――。脳科学とテクノロジーを組み合わせた「ブレインテック」の商用利用が進んでいる。

 三菱総合研究所は米国の調査会社のリポートを基に、ブレインテックの市場規模は2024年ごろに世界で約5兆円になると試算する。医療やヘルスケア、マーケティング、教育、スポーツなど幅広い分野での利用が期待される。

 とはいえ実際にブレインテックのサービスを利用したり活用事例を知ったりする機会はまだ多くない。脳の反応を使うとは一体どういうことなのか――。筆者が実際に体験してきた。

「注目度」と「感情の起伏」を測定

 訪れたのは渋谷にあるSpark Neuro Japan(SNJ)のオフィスだ。米スパークニューロの日本法人で、2018年5月に設立した。2019年3月にはデータ分析による広告効果の測定サービスを手掛けるサイカと提携し、動画広告の効果測定と改善支援を一気通貫で提供するサービス「Neuro Journey」を始めた。

 Neuro Journeyでは被験者を集めて動画広告を見せ、脳波などの生体信号を基に広告に対する「注目度」と「感情の起伏」を測定する。注目が集まるシーンや記憶に残りやすい要素を分析することで広告の改善につなげるという。早速、Neuro Journeyの一連の流れを体験させてもらった。

脳波を計測する機器を装着した様子、センサーの先端が頭皮に触れるように髪の毛をかき分ける
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 まず脳波を測定する装置を頭に装着する。装置には頭皮を流れる電気信号を測るセンサーが16極付いている。脳の反応を測るには血流量などを使う方法もあるが、電気信号は「刺激を受けてから脳が反応するまでのタイムラグが短いため、コンマ秒単位で分析が可能になる」(SNJの林恵一セールズ&マーケティングデイレクター)。

 また視聴者が自らの意思で何かに注目する場合と、突然の音など外部要因により受動的に注目する場合では反応する脳の部分が異なるため、流れる電気信号の種類が変わる。スパークニューロは16極のセンサーで頭部全体をカバーすることで種類の異なる脳波を測定して、より詳細な分析ができるという。

人工知能で人の脳を分析

 電気信号は筋肉を動かす際などにも流れる。実際に装置を付けた状態でまばたきや歯ぎしりをすると測定中の脳波を示すグラフが大きく変化した。

 こうした信号は注目度や感情の起伏には関係のない「ノイズ」として分析を妨げる要因である。センサーが増えれば拾うノイズも増えて分析は難しくなるが、スパークニューロは人工知能(AI)を使ってノイズのパターンを学習し、「自動的にノイズを取り除く技術を開発した」(林デイレクター)。

まばたきや歯ぎしりをすると脳波が大きく反応する、AI技術でこういった「ノイズ」を除去する
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