「あれ、お釣りは?」。2000年、初めての海外出張で訪れた米国ニューヨーク市のホテル。寝付けない夜中に喉の渇きを癒やそうとエレベーターホールにあった自動販売機で筆者は1ドル紙幣を2枚入れた。ボタンを押してソーダが落ちて来たのだが、25セントのお釣りが出てこない。何度か叩いても反応はない。単に壊れていたのか、それともお釣りが出てこないタイプのマシンだったのか——。今となっては、もう分からない。

 初出張でこの体験が頭にすり込まれたおかげで、いまだに海外の自動販売機を筆者は信用していない。まあ、ホテルや空港なら大抵ショップがあるし、最近はクレジットカード対応の自販機が増えている。困ることはない。

進化し続ける日本の自販機

外国人観光客にとって日本の自動販売機は興味深いようだ
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 あれから18年。日本の自販機に目を向けると、驚くほど進化している。例えば日本コカ·コーラ。スマートフォンアプリ「Coke ON」と連動し、購入するたびにスタンプを貯められる。15個を集めればドリンクチケットがもらえる。キリンビバレッジの場合もほぼ同じで、加えてコミュニケーションアプリLINEを活用してLINE Payで支払える。

 JR東日本ウォータービジネスが駅に設置している自販機も面白い。事前にスマホアプリで決済し、アプリに表示されたQRコードをかざしてドリンクを受け取る「イノベーション自販機」や、年代や性別に応じてぴったりのドリンクをお薦めしてくれるデジタルサイネージ型の「次世代自販機」なんてものまである。ネーミングのセンスはさておき、実際に使ってみると、ユーザー体験としては面白い。

 たかが自販機、されど自販機。それが街中に乱立している光景は、外国人観光客には奇異に映るようである。決してオモテナシだともクールだとも思わないし、よくあるテレビ番組のように礼賛するつもりはない。ただ、一握りでも日本に来たら体験しておきたいと思ってくれる層がいるなら、さらに突き詰めてマニアックな自販機をどんどん開発していけばもっと面白い現象を起こせるかもしれない。

 ただこの自販機天国の日本で、一つだけ気がかりなのは、キャッシュレスへのアプローチだ。最近は現金以外に電子マネーに対応した自販機が増えており、筆者がよく通っている図書館にあるドリンクの自動販売機も「iD」「楽天Edy」「nanaco」「WAON」「Suica」の5種類が使えると派手なステッカーが貼ってある。選択肢が広いことは多いに結構だが、いちいち使いたい電子マネーの種類を利用者にボタンで選ばせるのはいただけない。キャッシュレスに求められることは、現金より圧倒的にスムーズで簡便なユーザー体験である。

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