「これまでのやり方をぶっ壊したい」──。トヨタ自動車で電気自動車(EV)を開発する技術者がこう語った。これまでのやり方とは、「系列関係」に頼った部品選択ということだ。それをやめたい。すなわち、「トヨタ自動車なのだからトヨタグループの部品メーカーの部品を使う、という従来の方法はやめて、新しい造り方に挑みたい。このことは上の人間も認めてくれている」と言うのである。

 とっさに「ケーレツの解体」という言葉が頭に浮かんだ。同時に、トヨタ自動車やその1次部品メーカー(ティア1)に部品や材料、そして設備を納めているメーカーは、この言葉を聞いたら震え上がるのではないかと感じた。

 いまさらだが、日本の自動車メーカーと部品メーカーとの間には、系列関係と呼ばれる強固な関係がある。長期的に安定した取り引きを重視する企業関係のことだ。部品ごとなど、その時々の損益を基に取り引きを決める通常のビジネス関係を超えた“深い”この関係は、日本の国境を越えると理解されづらいようだ。そのため、ケーレツは日本市場に入り込みたい海外の自動車関連企業から、“アンフェア”な日本式参入障壁として、これまでしばしば批判の的とされてきた。その批判が的を射ているか否かはともかく、ケーレツは日本の自動車業界の競争の源だ。中でも、トヨタ自動車のケーレツは世界の産業界で最も強固と言っても過言ではない。そこでは典型的な「家族的経営」の関係が構築されている。

トヨタ自動車が開発中のEVのモックアップ
モジュラーデザインを導入し、車種間で部品を共通化してコストを抑える(写真:日経 xTECH)
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 冒頭の言葉は、EVの駆動源である電動パワーユニットについて聞いた時の回答だ。電動パワーユニットは、モーターとインバーター、減速機を1つにまとめたもの。一体化することで小型・軽量にできるなどの利点がある。EVの基幹部品の1つである上に、比較的造りやすいためか、EV分野でちょっとした開発ブームが起きている。そのため、電動パワーユニットの開発を手掛ける部品メーカーがたくさんあるのだ。トヨタグループでは、デンソーとアイシン精機とアイシン・エィ・ダブリュが3社がかりで電動パワーユニットの開発を進めている。

 トヨタ自動車は当然、これら3社が造る電動パワーユニットを選び、それこそ標準部品にするのだろうと私は思った。というのも、トヨタ自動車はグローバルで販売するEV向けに、EV版モジュラーデザイン「e-TNGA」を導入することを明らかにしたからだ。ガソリンエンジン車やハイブリッド車(HEV)で導入済みの「TNGA」は、標準部品として「TNGA部品」を設定している。それと同様に、e-TNGAでも「e-TNGA部品」を使うのだろうと推測したのだ。

 ところが、冒頭の技術者の回答はそうではなかった。e-TNGA部品と呼ぶかどうかは決まっていないし、そもそも特定の部品メーカーの採用も決まっているわけではないというのだ。「トヨタグループで開発中の電動パワートレーンを使わないのですか?」と畳み掛けたが、それに対して出てきたのが冒頭の言葉なのである。「もっと安価で品質の良いものがあれば、これまでのしがらみに関係なく使ってみたい」と。

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