先日、日経 xTECHでANAホールディングス(ANAHD)のデジタルトランスフォーメーション(DX)や情報システムなどに関する取り組みを特集としてまとめた。客室や空港、地上支援(グランドハンドリング)など、これまで人海戦術の側面も強かったエアラインの現場オペレーションをデジタルで変革し、直近では2020年の東京五輪・パラリンピックに伴う訪日外国人の急増、中長期的には日本の人口減少などに対応するという。

 特集に向けた一連の取材を進めるなかで最も記者の印象に残ったのが、中長期的な視野に立った新規事業開発に取り組む戦略部門、デジタル・デザイン・ラボ(DDラボ)における事業創造の仕方だ。

 まず「ANAグループの事業モデルは何によって破壊されるか」という問題意識を持ち、ブレーンストーミングを実施。格安航空会社(LCC)のように既に競合として顕在化しているものだけでなく、ドローン(小型無人機)、宇宙船、アバターなどが挙がった。そのうえで、それらの潜在的な脅威について「自社がそれらに破壊されるのを待つのではなく、自社で破壊的イノベーションを手掛けていこう」という考え方で取り組みを進めていると、ANAHDでDDラボの責任者を務める津田佳明チーフディレクターは明かす。

「ANAの事業モデルは何によって破壊されるか」の一例。既にリスクが顕在化している格安航空会社(LCC)は参入済み。将来のリスクと捉えているドローンや宇宙船、アバターなどについて、新規事業として取り組んでいる
(出所:ANAホールディングス)
[画像のクリックで拡大表示]

 ANAグループの新規事業の成否が明らかになるには、おそらくは数年~十数年の時間がかかるだろう。ただ、ANAグループの新規事業のテーマ選定に対する考え方は、エアライン以外も含めて幅広い日本企業にとって参考になるものだと考えている。

 今ある業務のカイゼンは得意だが、新規事業の創造は不得手。そんな日本企業は少なくないだろう。特に長年かけてコアコンピタンスを築いてきた大企業で、新規事業を形にするのは難しい。「これだ」という事業のアイデアがなかなか浮かばない、せっかく浮かんでも実現性や収益性に囚われた管理職や役員に阻まれて稟議が通らない、何とか稟議を通してスタートラインに立っても周囲は遠巻きに見るばかりで協力者の輪が増えていかない、あげく「うちの会社でそんなことやる必要ないんじゃない」などと心ない言葉を浴びせられる――。社内だけでもハードルはいくつもある。

この先は会員の登録が必要です。今なら有料会員(月額プラン)が12月末まで無料!

日経 xTECHには有料記事(有料会員向けまたは定期購読者向け)、無料記事(登録会員向け)、フリー記事(誰でも閲覧可能)があります。有料記事でも、登録会員向け配信期間は登録会員への登録が必要な場合があります。有料会員と登録会員に関するFAQはこちら