「確かに大きな問題だ。特にベイエリアでは深刻な状況が続いている」。こう話すのは米セールスフォース・ドットコムで人工知能(AI)開発を主導するチーフサイエンティストのリチャード・ソーチャー氏。「日本では優秀なAI人材の争奪戦が激しい。シリコンバレーではどうか」という筆者の問いに対して、このように答えた。

米セールスフォース・ドットコム チーフサイエンティストのリチャード・ソーチャー氏
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 世界中から優秀なエンジニアが集まる米国の中でも、アマゾン・ドット・コムやフェイスブックなど世界で名を知られるIT企業が目白押しのシリコンバレーでAI人材が取り合いになるのは当然といえる。それでもソーチャー氏は「他の会社と同様の魅力を我々は備えている」と自信を見せる。セールスフォースはAI人材の数を明らかにしていないが「勤勉でスマートな人たちを集めるのに成功しており、自分のチームに満足している」と話す。

 もちろん、優秀な人材の獲得に向けた努力を惜しまない。成果をオープンにするのは有用な手段の1つだ。深層学習(ディープラーニング)の主要なカンファレンスである「NIPS(Neural Information Processing Systems)」などの機会を利用して自社の研究の魅力を訴えたり、研究成果をOSS(オープンソースソフトウエア)として公開したりしている。

 ソーチャー氏は母校の米スタンフォード大学で非常勤教授(Adjunct Professor)も務める。「人材獲得に関する問題の緩和策の1つ」と同氏は位置づける。自然言語処理に深層学習を応用した先駆者の1人であり、AIの研究成果を実際のサービスにつなげる最前線に携わるソーチャー氏に教わるのは学生にとって大きな刺激となるに違いない。それがセールスフォースのリクルート活動になるというのも、うなずける。

AIスペシャリストは年収30万~50万ドル

 優秀なAI人材を確保するのが難しい──。この問題は世界中で深刻になりつつある。中国テンセントの調査機関であるテンセント・リサーチ・インスティテュートは2017年12月、「AI人材(タレント)の需給は著しくバランスを欠いている」とする調査結果を報告している。

テンセント・リサーチ・インスティテュートの報告書はこちら(中国語)

 報告書によれば、世界のAI人材は約30万人いる。内訳は企業に20万人、大学に10万人だ。これに対し、AI人材に対する需要は「市場全体で数百万人のオーダーに達する」。AI人材に関して、需要に供給が全く追い付いていないのが現状ということだ。特にAI開発を主導できるトップ人材は「世界を見渡しても1000人未満」と報告書は指摘する。

 深刻なAI人材不足は給与水準の高騰を招いている。米ニューヨークタイムズ紙は2017年10月22日付の記事で、「典型的なAIスペシャリストは年間30万~50万ドルを得ることが可能だ」と報じている。

ニューヨークタイムズの記事「Tech Giants Are Paying Huge Salaries for Scarce A.I. Talent」はこちら

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