「…なるほど、御社はそんな経緯で基幹系システムを刷新したんですね。総額はいくらだったんですか?」「そこは非公開で」「競合のA社は3000億円で刷新しましたよね、確か」「いやいや、そこまではかかってないですよ…」

 「先ほどお聞かせいただいた工夫が効いてA社の8割ぐらいってところですかね」「いや言えませんよ。でもそれより下です」「なるほど、でも半減は行きすぎですよね」「さてどうでしょう」――。

 記者はたいていこんなやりとりで何かにつけて取材先から「数字」を聞き出そうとする。プレスリリースや決算資料などで企業が自社システムの刷新などを公表するケースがある。だが多くは5W1Hの情報が足らず、何より「お金」の情報が少ない。だから記者は取材して、公表情報に付加価値をつけて記事にする。

システム部門の評価とは

 「数字が独り歩きするのが嫌なんですよ」。しつこい記者を制して、取材先はよくこう口にする。数字は嘘をつかず、人を納得させる力を持っているからだ。だからこそ記者も手を替え品を替え聞き出そうと躍起になる。

 長く記者をやっていて、筆者もいつの間にか数字にこだわる癖がついていた。かつて上司から「その数字がどういう意味を持つのか、高いとか安いとかそういう解釈をつけるのを忘れるな」と指導されたが、いずれにしろ数字にはこだわってきた。開発人月、画面数、開発期間、開発費用、システム障害の影響人数、そしてシステム導入の「効果」でも。

 だが先日、ガツンとやられた。東証1部上場のグローバル企業、サカタのタネの情報システム部門の嶺沢健一氏と話をしたときだ。嶺沢氏はこう言った。「システム部門の価値って何だと思いますか、定量的には測れないんですよ。定量的な効果なんて新しいシステムを入れれば高まるものです」。

情報システム部の嶺沢健一氏
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 アジャイル開発、超高速開発に興味のある筆者は2017年に同社を取材していた。ポルトガルのアウトシステムズ(OutSystems)製の超高速開発ツール「OutSystems」を導入してシステム開発をスタートしたと聞いたからだ。中途採用の嶺沢氏は長きにわたる外部委託で開発力を失いつつあった同社システム部門の「信頼」を取り戻すため奮闘を始めた、というストーリーで記事をまとめた。

超高速開発ツールとの出会いがきっかけ

 その嶺沢氏と久しぶりに会ったところ、OutSystemsでオフラインのモバイルアプリを「恐らく日本で初めて」(嶺沢氏)開発し、この6月3日にリリースしたと教えてくれた。品質管理部門が圃場で種を検査・検定するためのアプリで、「デジタルカメラで撮影、紙のノートで記録、事務所に戻ってデータ化」という従来の作業をアプリ1つで済ませられるようにしたという。

サカタのタネ本社(横浜市都筑区)
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 「開発期間を数字で」と問うと「正味1カ月」との返答が。「これまでの開発で一番長かった」。こう話す嶺沢氏が社内からの「信頼」を取り戻すために最も重視するのがスピードだ。「大概のWebアプリケーションは最短2日、平均2週間で作る」。

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