「今のままだと一発屋で終わってしまう」。ベネッセコーポレーション デジタル開発部の保本尚宏部長は手掛けたデジタル案件がひと段落した後の感想をこう述べた。その案件はこれまで同社が馴染んでいたウォーターフォール型の開発ではなくアジャイル型で臨んだ。案件は順調に進んだものの、はたして次をどうするか。そんな心境を述べた言葉が「一発屋」である。

 今、多くの企業がデジタルトランスフォーメーション(DX)を旗印に自らの事業を変革しようと悩みもがいている。ベネッセも例外ではなかった。同社は言わずと知れた教育サービス事業の大手。2014年には「こどもちゃれんじ」「進研ゼミ」などの顧客情報約760万件が外部に漏洩した事件で一時的に信頼を失墜、会員数は大きく落ち込んだものの、その後信頼回復に努め2017年4月には再び会員数が増加基調に転じた。

 だが復活もつかの間、事業を取り巻く環境は決して穏やかではない。デジタルを駆使した新たな教育サービスがこれまでの競合企業からだけでなく、ベンチャー企業からも登場。少子化のなかで限られた学習時間を奪い合う競争が続いている。

「モード2」組織を立ち上げる

 そんななか2017年6月、ベネッセは既存の情報システム部とは別に新たなIT組織であるデジタル開発部を立ち上げた。保本氏は調査会社ガートナーの用語を用いて、情報システム部を「モード1」、デジタル開発部を「モード2」の組織であると説明する。

写真右からデジタル開発部 部長の保本尚宏氏、同プラットフォーム課 課長の木村誠一氏、同プラットフォーム課兼開発支援課の高木研氏、同プラットフォーム課グループリーダーの藤井大助氏
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 モード1は既存ビジネスの安定継続を目的とした組織、モード2は事業変革や差異化を目的とした組織を指す。「攻め」と「守り」で言えばモード1は守り、モード2は攻めを担う組織だ。保本部長が率いるデジタル開発部は製品やサービスを率先してデジタル化する攻めの組織ということになる。

 もちろん組織を作っただけでデジタル化がすんなり進むわけではない。攻めのための組織のはずが、いつの間にか事業側からの「攻め」をかたくなに跳ね返す「できません」組織になってしまうことが往々にしてあるからだ。最初に何らかの案件で成功すると当然ながら次が期待される。事業側からも多くの要望が集まるようになるだろう。

 だがその組織は多くの案件をこなせるだけの人材が不足している。するとそこで選別が始まる。「こんなあいまいな要求では実装できません」「要件をきっちり定義してください」「前例がありません」・・・。気がつけば元の木阿弥どころか、守るものは自己の組織だけという「モード0」状態になりかねない。

 一発屋の組織を悲観的に描くとこんな近未来が待っているだろう。だからこそ一発屋で終わることなく、二の矢三の矢を放てる体制がデジタル化を担う組織には求められる。その際のカギがアジャイルだ。

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