「監督?絶対に無理。人望が無いから」「たぶん明日もトレーニングをしている。ゆっくりしたいとかは全然ない」

 米大リーグ、マリナーズのイチローが引退を表明した2019年3月21日深夜の記者会見。ライブ中継を見ていた記者にとって興味が湧いたのは、大多数の視聴者と同じく彼のセカンドキャリアだ。会見でも指導者に就任する可能性や引退後の時間の使い方に関する質問が出た。本人は監督就任の可能性をきっぱり否定していたが、個人的には「イチ流」の監督やコーチ姿を見てみたいと感じてしまった。

 プロスポーツ選手にとってセカンドキャリアは切実な問題とされる。イチローほどのスーパースターなら選択肢は両手に余ると勝手に想像するが、大多数の選手はそうではないだろう。

 実はデジタルの世界でも「プロスポーツ選手」のセカンドキャリア形成が問題となりつつある。そのスポーツとはeスポーツ。テレビゲームやスマホゲームを競技としてプレーし、チームや個人が勝敗を競う。

 いま、eスポーツをプロとしてプレーする選手が続々と誕生している。業界団体の日本eスポーツ連合(JeSU)が独自の基準で認定したプロeスポーツ選手は130人余り。日本テレビや読売新聞社、様々な芸能事務所などが相次いでプロ選手から成るチームを発足させた。彼らはゲームを職業に、大会に出場して得た賞金や所属企業から受け取る給料などを収入とする。

 プロ選手増加の背景にあるのが国際的なeスポーツの盛り上がりだ。日本プロサッカーリーグ(Jリーグ)や日本野球機構(NPB)がサッカーと野球のゲームを使ったeスポーツのプロリーグをそれぞれ開催。サイバーエージェント傘下のCyberZやゲーム会社のアカツキなど、プロリーグを設立する企業も相次いでいる。世界では国際サッカー連盟(FIFA)が主催するサッカーゲームの世界大会「FIFA eWorld Cup」まである。

選手寿命は30代前半?

 記者が気になるのは、にわかに量産されつつあるプロeスポーツ選手の将来だ。「選手寿命はリアルスポーツに比べて短い。eスポーツ選手が一線で活躍できるのは、せいぜい30代前半までだろう」。関係者はこう話す。筋力の衰えがハンディになることはリアルスポーツ選手に比べて少ないかもしれない。しかし動体視力や反射速度、一瞬の状況を判断する能力などの衰えは、リアルスポーツ選手に劣らず影響が大きいという。

 eスポーツが国内で認知され始めてせいぜい数年。まだセカンドキャリアに踏みだすプロ選手自体まだわずかだろう。それでも気が付いたらゲームに没頭したまま30代後半を迎えた――。このままでは不幸な道をたどる元eスポーツ選手が大量に生まれてしまうのではないか。

 意外な企業がeスポーツ選手の能力に目を付けた。コンサルティング大手のPwCコンサルティングだ。同社は今、プロeスポーツ選手のセカンドキャリア支援に向けて、セキュリティー技術者への転身を促す教育プログラム作りを進めている。

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