ソフトバンクの源流の1つ、東京デジタルホンが携帯電話サービスを始めたのは1994年。2019年の今年で丸25年になる。デジタルホン時代から現在まで、25年の間モバイル技術に関わり続けてきたのがソフトバンク 常務執行役員 モバイル技術統括の佃英幸氏だ。モバイル通信(移動通信)は、利用者数とトラフィックの増加との戦いでもあった。ソフトバンクにおけるモバイル通信の技術開発の歴史を振り返る。

ソフトバンク 常務執行役員 モバイル技術統括の佃英幸氏
[画像のクリックで拡大表示]

少ない加入者を逆手に、「エンハンストフルレート」で高音質

 東京デジタルホンは1994年、2G(第2世代移動通信システム)による携帯電話サービスを開始した。これを皮切りに、デジタルホン各社とデジタルツーカー各社がサービスを開始。各社はソフトバンクの源流でもある。採用した方式は、NTTドコモが開発を主導した標準規格「PDC」だ。

 2Gでの課題は、急増する利用者をいかに限られた周波数帯域に収容するかである。1G(第1世代移動通信システム)は通話音声をFMやPMなどのアナログ変調で搬送波に直接載せて送る方式だった。これに対し、2Gは音声をデジタル化することで符号化・圧縮が可能となり、帯域の利用効率は大幅に向上した。

 さらに符号化には、音声波形をそのままデジタル化するPCMなどではなく、人間の発声をモデル化して大幅に圧縮するVSELPという方式が使われた。VSELPのビットレートは11.2kbps。

 だが、VSELPでも利用者の急増に対応できなくなった。そこでVSELPに改良を加え、ビットレートを半分の5.6kbpsに抑えたPSI-CELPが開発された。VSELPを使ったサービスはフルレート、PSI-CELPを使ったサービスはハーフレートと呼ばれた。

 ハーフレートにより収容効率は上がったが、利用者には音質が悪いと不評だったという。そこに目を付けたのはソフトバンクの前身であるJ-フォンだ。J-フォンはデジタルホンとデジタルツーカー各社の新たな社名である(後に各社が合併する)。

 1999年、新たに始めたのは「エンハンストフルレート」というサービス。「『音の良いJ-フォン』ということで、差をつけようと考えました。無理に帯域を半分にしていたのをやめてフルレートにし、さらに性能の高い符号化方式を採用しました」(佃氏)。採用したのはVSELPよりも性能の高いACELPという方式。

 一方で、NTTドコモも同時期に同様のサービスを始めている。こちらもVSELPよりも性能の高いCS-ACELPを採用し、フルレートを使った「ハイパートーク」だ。ただ、フルレートを使えるのは帯域に余裕があるときで、利用者が増えてくるとハーフレートを使わなければならない。この点でNTTドコモよりもJ-フォンが有利だった。「ドコモは加入者をいっぱい抱えていました。我々は、帯域当たりの加入者にまだ余裕があったので、そこを狙ったわけです」(佃氏)。

この先は会員の登録が必要です。今なら有料会員(月額プラン)が12月末まで無料!

日経 xTECHには有料記事(有料会員向けまたは定期購読者向け)、無料記事(登録会員向け)、フリー記事(誰でも閲覧可能)があります。有料記事でも、登録会員向け配信期間は登録会員への登録が必要な場合があります。有料会員と登録会員に関するFAQはこちら