日本経済団体連合会(経団連)加盟企業の採用説明会が2019年3月1日に解禁された。街を歩けばそこかしこで、黒いリクルートスーツに身を包んだ学生を目にする。だが記者が取材に向かった就職活動(就活)イベントに、リクルートスーツ姿は皆無だった。

 そのイベントの名は「就活アウトロー採用高専生編」。働く意欲は高いが、「就活」という文化やシステムには違和感がある。既存の枠にとらわれずに就職先を探したいという高等専門学校(高専)生向けのイベントだ。3月6~7日の2日間にわたり、東北から沖縄まで全国各地の高専から、ITエンジニア職を志望する15人ほどが集まった。

「就活アウトロー採用高専生編」1日目の様子。参加者同士で、興味のあることなどを話し合う。「Python」「Kaggle」などのキーワードが飛び交い、会話が盛り上がっていた
[画像のクリックで拡大表示]

 就活イベントだが、エントリーシートや企業説明会、面接などは一切無い。初日は参加学生同士が対話を通じて、自分の現在の状況を整理し直したり、働くことへの疑問や違和感を共有し合ったりする。

 2日目は、アウトロー採用に興味を持つITベンチャー企業などの採用担当者とディスカッション。担当者は社名を明かさないまま、自由な会話を通じて互いを理解する。最後に社名を明かし、マッチングが成立すれば会社訪問など次のステップに進む流れだ。

 新卒採用は学生が有利な売り手市場が続いているが、専門技術を持つ高専生の人気はひときわ高い。各地の高専が公開する学生の求人倍率は30倍超も当たり前で、まさに引く手あまただ。就職先はいくらでも選べそうなのに、なぜわざわざ交通費を自己負担してまで、遠くからこのイベントに足を運ぶのか。

 会場で話を聞くと、高専生を取り巻く独特な就職事情が見えてきた。

「大企業への就職」を期待される

 「高専生にはものすごく期待がかかっている。保護者や教師をはじめ周囲の大人たちが、大企業に就職するものという枠をはめてしまいがち」。そう話すのは、イベントを運営するNPO法人、キャリア解放区の納富順一代表理事。高度な技術を習得した即戦力だからこそ、大企業や地元の有力企業への入社を勧められることが多い。それが本人のためになると思うからだ。

 中にはITベンチャーなどそれ以外の企業に興味を抱く学生もいるが、志望するような企業とは接点を持ちにくいケースがあるという。自身も高専出身で、今回のイベントの企画運営に携わる宮前明奈HRコンサルタント/ディレクターは「高専にはたくさんの企業から求人が殺到し、大企業の推薦枠も多い。ベンチャー企業はなかなか入り込めない」と話す。

この先は会員の登録が必要です。有料会員(月額プラン)は初月無料!

日経 xTECHには有料記事(有料会員向けまたは定期購読者向け)、無料記事(登録会員向け)、フリー記事(誰でも閲覧可能)があります。有料記事でも、登録会員向け配信期間は登録会員への登録が必要な場合があります。有料会員と登録会員に関するFAQはこちら