「あー、そういうことか」。自分が理解したと思った瞬間、納得と引き換えにして対象への興味は薄れる。そんな1つが米IBMのコンテナ戦略だった。しかしITが進化するスピードは本当に速く、ある時点の「納得」などあっという間に置き去りだ。その最新戦略が面白い。

 米IBMは2019年2月、同社のAI(人工知能)ソフト「Watson」がコンテナ運用管理ツール「Kubernetes」に対応したと発表した。オンプレミス環境で稼働する同社の運用管理基盤「IBM Cloud Private(ICP)」をはじめ、Kubernetesベースのサービス上でWatsonが利用可能になったわけだ。もちろん、「AWS(Amazon Web Services)」や「Microsoft Azure」といった競合のパブリッククラウドが備えるKubernetesサービスでのWatson利用も視野に入っている。

 IBMは今、主要ソフトウエアのコンテナ化を徹底的に進めている。アプリケーションサーバー「WebSphere Application Server(WAS)」を軽量化した「Liberty」をはじめ、その数は数百に上るという。最新のソフトは最初からコンテナ上で開発しており、Watsonもその1つだ。

コンテナ化ではなく「Kubernetes化」

 注目したいのは、単にソフトをコンテナ上で稼働できるようにしているわけではない点だ。Kubernetesを共通基盤とし、その機能を最大限に引き出すようにソフトを作り直しているのがIBM流である。「これまで共通基盤といえばWindowsやLinuxといったOS、VMwareなどの仮想マシンだった。今後、どのレイヤーで技術をそろえるかを考えた末に、Kubernetesを選んだ」。日本IBMの渡辺周一クラウド・テクニカル・セールスエグゼクティブアーキテクトはこう説明する。

 Kubernetesの基となったのは、米グーグル(Google)が自社サービスの管理の負荷軽減に向けて開発した「Borg」だ。オープンソースソフトウエアとして公開された後は、「Cloud Native Computing Foundation(CNCF)」配下で開発が進められている。CNCFの最高位メンバー(プラチナ)には、グーグルやIBMはもちろん、米アマゾン・ウェブ・サービス(Amazon Web Services)や米マイクロソフト(Microsoft)なども名を連ね、Kubernetesの機能強化に努める。

 日本IBMの三沢智光取締役専務執行役員IBMクラウド事業本部長は「KubernetesさえあればどのクラウドでもIBM製品を最適に稼働できる。特定のクラウドにしかないサービスに囲い込まれるロックインを避けられるメリットを訴求し、IBM製品を拡販していく」と話す。Kubernetesを担ぐクラウド事業者が増えるなか、Kubernetes化はIBMのマルチクラウド戦略を支えている。

 2018年10月に発表したIBMによる米レッドハット(Red Hat)買収もKubernetes普及に向けた動きだ。レッドハットはKubernetesベースのコンテナプラットフォーム「OpenShift」を持つ。これにIBM製ソフトを組み合わせて、「OpenShiftをエンタープライズ向けに進化させる」(渡辺氏)狙いがある。リレーショナルデータベース管理システム(RDBMS)をはじめ、IBMが得意とするミドルウエア分野のソフトとバッティングが少ないレッドハットとなら、手を取り合ってKubernetes拡販を進められるというわけだ。

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