仕事にやりがいを感じていたはずの社員が急に退職届を出してきた。当社の理念に共感し、業務内容にも満足していたと思っていたのになぜ――。心当たりのある人事担当者は「ハイジーン(衛生)要因」を疑ってみてほしい。最近ではハイジーン要因に特化した可視化ツールも登場した。

ハイジーン要因に特化した可視化ツール「ハイジ」の画面
(出所:おかん)
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 ハイジーン要因は米国の著名な臨床心理学者であるフレデリック・ハーズバーグが提唱した概念だ。仕事における満足と不満足を引き起こす要因に関する「二要因理論」に基づく概念だ。ハーズバーグは従業員の満足度の低下や離職の原因には「動機づけ要因(モチベーター)」と「衛生要因(ハイジーンファクター)」の2種類が影響すると提唱した。

 動機づけ要因は仕事のやりがいや責務、企業理念への共感などを指し、仕事における満足をもたらす。一方、ハイジーン要因は会社の戦略と管理方式、監督技術、給与、上司や同僚との関係、自身の健康状態、仕事と家庭の両立などが該当する。ハイジーン要因の充足度が低いと、仕事への不満につながる。動機づけ要因が仕事の内容に関係するのに対し、ハイジーン要因は仕事の環境が関わる。

離職理由の8割はハイジーン要因が該当

 重要なのは動機づけ要因が欠けているからといって、仕事に対する不満足を引き起こすわけではない点だ。仕事への不満につながる要因は別にあり、それがハイジーン要因になる。ハイジーン要因に関する調査・分析サービス「ハイジ」を提供するおかんによると、厚生労働省の調査結果「平成28年雇用動向調査結果の概要 」において、転職入職者が前職を辞めた理由(自社都合退職のみ)の約8割はハイジーン要因が当てはまるという。

 愛社精神の強い優秀な人材であっても、ハイジーン要因の影響で離職する場合がある。離職の本当の理由を解明するにはやりがいなど仕事の内容だけでなく、家庭との両立といった仕事の環境により注目する必要がある。

 ハイジーン要因は欧米では経営上の重要な投資対象として認知されている。外資系企業が食事を無償提供したり、仕事と家庭の両立を支援する制度を充実させたりするのは博愛主義に基づくわけではない。人材流動性が高い環境において、優秀な社員を手放さないための戦略投資にほかならない。

 日本の場合、離職理由についてはこれまで動機づけ要因に関心が集まりがちで、ハイジーン要因に対する議論は比較的少なかった。欧米に比べた人材流動性の低さが一因ではあるが、少子高齢化で労働人口不足が社会課題となる日本でも、今後ハイジーン要因を意識した人事施策が欠かせない。

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