「本日入社いたしました、AIの××と申します。▲▲社製で、自然言語処理を得意としています。どうぞ宜しくお願いします」――。

 4月まであと1カ月半。新入社員を迎える準備を始めた企業も多いだろう。

 新入社員のうち一部が人工知能(AI)になる。企業は人間に加え、AIも採用するようになる。そんな光景が当たり前になる日も遠くない、と私は考えている。

AIへの投資は「先行投資」

 AI投資は数年~十数年先を見据えた先行投資だと、ソフトバンクグループの孫正義会長兼社長は強調している。「AIは乗り物、医薬品、健康、建設、不動産、ありとあらゆる産業を再定義していく」。孫氏は2019年2月6日の決算説明会の場でこのように話した。「ニューヨーク5番街は2035年にはAIによる自動運転車だらけになる」との予測も示した。

ソフトバンクグループの決算発表会で登壇した孫正義会長兼社長
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 孫氏は「AI革命は必ず起こる」というビジョンの下、世界中の企業に投資している。サウジアラビアの政府系ファンドなどと組んで設立した10兆円規模の投資ファンド「ソフトバンク・ビジョン・ファンド」(SVF)を通じて投資した企業は70社を超え、「ほとんどがAIに強く関わっている会社、ユニコーンだ」(孫氏)と述べた。

 孫氏の巨額な投資の根幹には、「AIによる情報革命が起きる」という信念がある。孫氏はAIの可能性を信じて、AI技術を持つ企業に先行投資をしているのである。

 こうしたAIへの投資の考え方は、孫氏が手掛けている巨額かつグローバルな投資だけでなく、個々の企業によるAIシステムへの投資にも当てはまる。投資から数年または10数年を経て、大きなリターンを企業にもたらす。その点で、AIシステムへの投資は新入社員の採用に似ている。

 私はこれまで企業のAI導入について取材を重ねる中で、AIが製造や交通、医療など様々な分野で活用されるのはほぼ間違いない、と考えるようになった。

 取材で触れたAIシステムは、いずれも企業の「貴重な社内人材」だった。過去のデータを学習・分析することで社員の意思決定を助けたり、社員の代わりに顧客の疑問に答えたりできる。

 社員のダイバーシティー(多様性)が重視される時代になったが、性別や年齢、国籍など人間の多様性に加え、今後はAIのような人間以外の「人材」を含めた多様性が求められそうだ。人手不足の中、人間の人材はなかなか確保しづらい。人間の女性やシニアだけでなく、AIも企業の救世主になり得る。

 部門長などの管理職はAIの「上司」として、部下だけでなくAIをマネジメントする必要が出てくるだろう。AIをうまく使いこなし、もしくはAIを使いこなせるように部下を教育し、人間に任せる仕事とAIに任せる仕事をうまく判別して、全体としてのパフォーマンスを上げる。そんなマネジメントが求められる。

 新入社員の採用と同じく、「どのAIを採用するのか」は慎重に見定めなければならない。人間と同じで、AIもそれぞれ「個人差」がある。

 入社したAIへの教育方法も重要だ。企業がAIに過去のデータを学習させて精度を高めたり、運用の体制を整えたりしているのは、新しく入社した社員に仕事のやり方を教えるのと似た構造だ。

 AIを導入したばかりの段階で「AIの予測精度が人間よりも低い」「業務には使えない」と言うのは、新入社員に「どうしてベテランと同じ働きができないのか」と言うようなものである。AIも入社したてのうちは、分からないことだらけだ。根気よく適切に学習させれば、そのうち仕事をこなしていけるようになる。

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