地球上の陸地を大洪水が襲い、人類が海に帰る日が近づいているとでもいうのか――。そんな冗談が頭に浮かんでくるほど、2019年1月上旬に米ラスベガスで開催されたテクノロジー分野の大型展示会「CES 2019」の会場では、「水中ドローン(Underwater Drone)」を数多く見かけた。筆者が確認した範囲だけでも、9社が展示していた。

 しかも全て、米国以外のスタートアップ。中国企業8社(深センに本社がある会社が4社、北京と天津、香港、上海がそれぞれ1社)とフランス企業1社だ。なぜ今、水中ドローンなのか。そこには切ない業界事情とともに、わずかな希望に賭けてひと山当ててやろうとする貪欲さが透けて見えた。

 そもそも水中ドローンとは、遠隔操作する水中探査艇(ROV、Remotely Operated underwater Vehicle)の簡易版のこと。本体には、水中を移動するための複数のスクリューとバッテリー、カメラ、ロボットハンド、通信用の有線ケーブルなどを搭載している。陸上や船上にいる操縦者(オペレーター)はスマートフォンやタブレット用のアプリケーション、あるいは専用コントローラーを使って、水中ドローンがカメラで撮影する水中映像を見ながら動かすのが一般的だ。

 例えば、中国・深センに本社を置くShenzhen Geneinno Technologyが米国で2599ドルからという価格で販売している水中ドローン「Titan」を詳しく見てみよう。Titanは幅34.8センチ×奥行き38センチ×高さ16.8センチの大きさで、垂直方向移動用のスクリューを4個、水平方向移動用のスクリューを2個搭載。水深150メートルまで潜水可能だという。

Shenzhen Geneinno Technologyの水中ドローン「Titan」
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 本体につながるケーブルの先(陸上側)には中継器が付いている。操縦者のスマホやタブレットからは、Wi-Fiで中継器に接続する。するとスマホやタブレットのアプリから、Titanをコントロールできるようになる。カメラは静止画や4K動画の撮影に対応している。バッテリーで4時間の水中駆動が可能だ。

音声信号で遠隔操縦する水中ドローンも

 有線でのコントロールが要らない「自律型」の水中ドローンもある。フランスのスタートアップであるNotilo Plusが2018年10月に、4499ドルからの価格で発売した水中ドローン「iBubble」だ。

フランスのスタートアップであるNotilo Plusの水中ドローン「iBubble」
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 iBubbleはソナーを使ってダイバーの位置を検出しながら、ダイバーからある程度の距離を保ったうえで追従して動く。そしてダイバーの周辺を動画撮影する。要は水中用のロボットカメラマンだ。ダイバーが腕時計型のコントローラーを身に着けて、iBubbleを遠隔操縦することも可能。コントローラーとiBubbleの通信手段はソナー、つまり音声信号である。ケーブルを取り付ければ、有線でも操縦できる。

 中国・北京にあるBoya Gongdao Robot Technologyの水中ドローン「BIKI」もケーブルを使わず、音声信号で遠隔操縦が可能なタイプ。こちらは既に日本で販売されており、実勢価格は10万円前後。

Boya Gongdao Robot Technologyの「BIKI」
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 ここまで代表的な3つの製品を紹介したが、そもそも水中ドローンの用途はいったい、何だろうか。中国・上海のスタートアップであるYoucan Roboticsに聞いてみた。同社の水中ドローン「BW SPACE」は1649ドルで、コントロールアプリでダイバーを指定すると、そのダイバーを画像認識しながら追従して水中撮影するものだ。

Youcan Roboticsの「BW SPACE」
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 同社の李之勤(Snow Lee)CEO(最高経営責任者)によると、水中ドローンのニーズは「法人向けが半分、レジャーなど消費者向けが半分」だという。業務用の場合、従来は潜水士が担っていた水中にある構造物をチェックするといった仕事を水中ドローンに置き換える。一方、レジャー用途ではダイビング時の撮影に使う。

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