「DX(デジタルトランスフォーメーション)」や「デジタル変革」といったキーワードをよく見かけるようになってきた。取材記事だけでなく、企業の人事異動を知らせる記事でもだ。「デジタルトランスフォーメーション」を冠した部署がどんどんできている。

 DXの定義は様々だが、ここでは「AI(人工知能)やIoT(インターネット・オブ・シングズ)といったデジタル技術を使って、商品やサービス、業務、組織、文化を変革し、新事業を生み出す取り組み全体」としておく。DXに取り組む理由は言うまでもなく、デジタルビジネスで既存ビジネスを壊して市場を奪う「デジタルディスラプター」への対抗だ。先手を打って変革を果たせなければ生き抜けないという危機感がある。

 大切なのは、DXは単発や散発の取り組みではなく、長く続ける取り組みであるという点だ。一度や二度の失敗で諦めるものではない。1000件試みて3件しか成功しない「千三つ」を前提にトップダウンで取り組む姿勢が欠かせない。その意味で企業で組織化が進んできているのだ。言い換えれば、あらゆる企業がディスラプターになり、業種業界の壁を壊そうとしているとも言える。

破壊と創造、CDOにミッション

 DXのかじ取りを担うのが「CDO(最高デジタル責任者)」である。記者が所属する日経コンピュータでCDOを真正面から特集したのはちょうど2年前に遡る。「CDO 破壊と創造の旗手」と題した特集で、6人のCDOのインタビューをまとめ、CDOの資質や発想方法、今と今後の取り組みなどを浮かび上がらせた。全員がシステム部門以外の出身という点でパラダイムシフトの到来を感じたのを覚えている。

 特集冒頭に登場したのがSOMPOホールディングスの楢崎浩一グループCDO常務執行役員だ。三菱商事出身で保険業界は未経験。だがSOMPOホールディングスの桜田謙悟グループCEO(最高経営責任者)社長や損害保険ジャパン日本興亜の西沢敬二社長との面談を通して入社を決めたという。

 楢崎CDOは特集で「デジタルの力で全社的なイノベーションを進めるのが私の仕事」と話していた。リーンスタートアップなど米シリコンバレーの流儀をSOMPOホールディングスに持ち込むため、2016年4月にデジタル分野の研究開発拠点「SOMPO Digital Lab」を本社ビル内に開設。セゾン自動車火災保険や損保ジャパン日本興亜ひまわり生命保険でデジタル技術を使った新しい保険関連サービスをスタートさせたほか、「20~30の(デジタル関連事業)プロジェクトを同時進行で進めている」としていた。

 特集から2年。SOMPOホールディングスのDXに新たな成果が出てきた。傘下のSOMPOリスクマネジメントがサイバーセキュリティー分野の新サービスをスタートさせたというのだ。

専業顔負けのサービスラインアップ

 ラインアップは幅広い。Webサイトやシステムに対する脆弱性診断などに基づくセキュリティーコンサルティングから、マルウエアやビジネスメール詐欺(BEC)などの脅威を防ぐサービスの提供、各種システムの遠隔監視、ダークWebの巡回に基づく情報漏洩や攻撃情報の検知、サイバー攻撃や標的型メールに対する訓練・教育、インシデント対応まで、セキュリティー専門会社としてのフルサービスに相当する内容だ。

 米中の間などで脅威が高まっている、「サプライチェーン攻撃」のリスクを可視化するサービスも用意するという。同攻撃は取引先や業務委託先、海外拠点、グループ会社といった「サプライチェーン」を経由して標的に侵入する攻撃である。SOMPOホールディングスの本業で提供する、サイバー攻撃の対応費用などを保証する「サイバー保険」もラインアップに組み込むが、顧客が望めば他社のサイバー保険を使うことも問題ない。

 本業の「壁」を意識する必要がないため、「既存顧客はもちろんのこと、競合の顧客にも食い込めている」と、SOMPOリスクマネジメントでセキュリティー事業を統括する宮嵜義久取締役執行役員サイバーセキュリティ事業本部長は話す。宮嵜氏はメインフレーム相手のシステムエンジニアを振り出しに、ユーザー部門とシステム部門の調整役となるIT企画担当、現場での新保険の企画担当、全社相手の業務改善担当などを歴任し、SOMPO Digital Lab開設から楢崎CDOの下でデジタル戦略に身を投じてきたという。

SOMPOリスクマネジメントの宮嵜義久取締役執行役員サイバーセキュリティ事業本部長
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 SOMPO Digital Labでは「桜田(社長)から破壊的イノベーションの立ち上げを特命部長として任された」と振り返る。前述したセゾン自動車火災保険や損保ジャパン日本興亜ひまわり生命保険におけるイノベーション、つまり既存事業の「持続的イノベーション」ではなく、自らがディスラプターになる難題をミッションとして与えられたわけだ。条件は「安心・安全・健康」を軸とすることのみだ。

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