「大企業が新規事業を立ち上げるのは難しいとよく言われるが、うまく進める裏技がある」。企業の新規事業立ち上げを支援するQUANTUM(クオンタム)の高松充社長兼CEO(最高経営責任者)は事もなげにこう話す。

QUANTUMの高松充社長兼CEO

 多くの企業がデジタル技術を駆使した新規事業の立ち上げに躍起だ。「自ら新しいデジタルビジネスを打ち出さなければ、他業界からディスラプション(破壊)されてしまう」。こうした危機感に駆られて動き出してはいるものの、そのやり方は試行錯誤が続いているのが現状だ。

 そうしたなか、記者が耳にした高松社長の手法は非常に納得のいくものだった。大まかに言うと以下のようなことだ。

市場に出すタイミングで「待った」

 まず、QUANTUMが企業の事業部門と共に新規事業を企画する。なるべく早く製品やサービスのプロトタイプを作り、市場に出す。顧客からのフィードバックを得てブラッシュアップするためだ。

 ただ多くの場合、市場に出す段階で経営層や事業部長などから「待った」がかかる。初期の製品やサービスは洗練されていないことが少なくないので、「そんな商品を世に出したら自社のブランドに傷がつく」といった理由で承認が通らないのだ。

 ここで高松社長は裏技を繰り出すという。初期の段階では、QUANTUMが自社の製品やサービスとして販売するというのだ。新規事業を立ち上げようとしていた大企業の名前はあえて表に出さない。出しても協力企業の1社として表記するにとどめる。

 同時に、その製品やサービスのビジネスが軌道に乗ったら事業ごと買収してもらう約束を企業に取り付ける。どのくらいの期間でどの程度の収益になったらいくらで買うか、などの条件を決め、了承を得ておくのだ。

 この手法であれば、たとえ失敗しても既存事業への影響を局所化しやすくなる。一方、QUANTUMにとってもメリットはある。「出口戦略が明確なスタートアップ企業は、そうでないケースと比べて格段にグロース(成長)させやすい」(高松社長)からだ。高松社長はこの裏技を「スピンアウトイン」と呼ぶ。一度事業をスピンアウトさせた後に企業内に買い戻すという意味だ。

この先は会員の登録が必要です。今なら有料会員(月額プラン)が4月末まで無料!

日経 xTECHには有料記事(有料会員向けまたは定期購読者向け)、無料記事(登録会員向け)、フリー記事(誰でも閲覧可能)があります。有料記事でも、登録会員向け配信期間は登録会員への登録が必要な場合があります。有料会員と登録会員に関するFAQはこちら