米国の巨大IT企業に対する包囲網が世界で強まっている。欧州に続き、日本も動き始めた。

 政府は2018年12月18日、巨大IT企業に対する新たな規制方針を公表した。電子商取引(EC)や検索などのプラットフォーム運営企業を対象に独占禁止法を強化して実態調査に踏み込むほか、取引実態を継続的に監視・調査する機関を2019年中ごろにも新設する方向で検討することなどを盛り込んだ。

 規制の狙いは、消費者利益の最大化や消費者保護の強化、優越的地位乱用の防止など。2018年には米フェイスブック(Facebook)や米グーグル(Google)による個人情報のずさんな管理の実態が相次ぎ明らかとなった。米アップル(Apple)や米アマゾン・ドット・コム(Amazon.com)も取引先に対する不公正な取引が疑われている。

 実際、公正取引委員会はこの1~2年の間にアップル(携帯電話大手に対してiPhoneの注文数量や料金プランなどを規定)とアマゾンジャパン(商品納入業者に対して協力金を要請)を調査し、一部取引の是正を迫った。巨大IT企業による租税回避も大きな問題となっている。

 日本政府が念頭に置く規制対象は「GAFA」(グーグル、アップル、フェイスブック、アマゾン・ドット・コム)をはじめ、ECや検索、アプリ配信などの分野で圧倒的シェアを握るプラットフォーム運営企業だ。

 今回の規制方針で最大の注目は、巨大IT企業が収益の源泉としている個人データを「金銭と同じく経済的価値を持つ」と位置付けた点だ。検索やSNSなどの無料サービスでユーザーを集めてきたネット企業はこれまで、独占禁止法の適用がなじみにくいと見られてきた。

 しかし、個人データが極めて高い価値を持つと認められれば、利用者に課金していないとはいえ、無料サービスへの見方が変わる。多くのネットサービスは、実は無料ではない。「利用者が経済的価値を持つ自らの個人データを運営元に提供し、その対価としてサービスの提供を受ける」という物々交換のような取引関係が成立する。

 規制方針を議論した有識者会合の構成員を務めた大阪大学大学院高等司法研究科の千葉恵美子教授は、「ネットサービスの利用は(ギブアンドテイクの)取引行為だ。提供企業は個人情報をどう利用して収益化しているかを利用者(=データ提供者)に説明し、同意を得るべきだ」と指摘する。

規制方針のたたき台を作った有識者会合「デジタル・プラットフォーマーを巡る取引環境整備に関する検討会」の模様。経済産業省、公正取引委員会、総務省の3機関が共同開催した
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 政府は、説明が不十分だったり、説明を逸脱して個人データを利用していたりするプラットフォーム運営企業を、利用者に対する優越的地位の乱用だと解釈できるよう独占禁止法の拡大や解釈変更を目指す。巨大IT企業に対し、利用者との関係作りを大きく見直すことを求める。

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