産業用の国内ロボット・メーカーとして、ファナックと並ぶ雄と言えるのが安川電機だ。ロボット市場がグローバルで拡大を続け、ドイツKUKAやスイスABBなど海外の強豪もひしめく中、安川電機は何を強みとし、どこに向かっていくのか。創業100周年を大きく超えた同社で代表取締役社長を務める小笠原浩氏に戦略を聞いた。(聞き手=日経 xTECH 編集長 大石 基之)

(写真:菅敏一)

安川電機は創業(1915年)から100年を大きく超えて、本社をはじめ中核機能を創業の地(福岡県黒埼)に集約するなどの動きが目を引いています。小笠原社長が創業の理念として大切にしているものをおうかがいします。

 弊社の経営理念には、品質重視、顧客重視、社会貢献の3つがあります。実際にあった話ですが、弊社は創業から17年間は赤字だったんです。この粘り強さが大切だと思っていまして、とにかく赤字でもやるべきことはしがみついてでもやるという考えは今も脈々と受け継がれています。もう1つ、私が大切にしているのが「技術立社」というキーワードです。これは我々にとって重要なキーワードでして、だからこそ経営理念の最初に品質重視がくるんです。2016年に私が社長に就任する際に、経営理念も変えるかという話を前社長としました。利益重視を前に持ってきて、品質重視を2番目にするという案も出ましたが、結局、変えませんでした。

 もちろん中期経営計画(2025年ビジョン)の中では、売上より利益を重視という形で大きく変えたりはしていますが、創業の精神という意味ではやはり品質重視が最上位に来ます。つまりは、技術立社や品質重視という方針こそが社会的な信頼につながると考えて事業運営しています。

 こうした考え方から、会社を大きくするために全く違う事業領域に投資をするとか、事業規模を大きくするためだけにM&A(合併・買収)をするという考えは基本的にありません。M&A戦略についてはよく聞かれますが、我々がM&Aをするのは技術を補完するという目的がある場合です。最新の技術を獲得したり、今我々にない技術を補完するためのM&Aはあり得ますが、市場を手に入れるためにどこかの会社を買って、その市場だけを取って、残りの事業を切り捨てるといったことはしません。自社の注力領域とは全く異なる業態を単に買うということもありませんし、シェアをとるために同業他社を買って市場だけを手に入れて、残りを捨てるみたいなことはやらない。

技術の補完という視点でのM&Aはやるとのお話でしたが、今小笠原社長から見てここは足りないなとか、ここはこれから必要かもしれないという技術領域はどういうものがありますか?

 そこは正直よく分かりません。というか分かっていたらやるという話ですけど(笑)。今弊社がメカトロニクスというキーワードでずっと事業展開してきている中で、今絶対この技術が足りないからどうにかしなければいけないということはないです。あったら負けますから。

 もちろん、何らかの技術のパラダイムシフトが起きて、そこに対応しなければならないことはありうるでしょう。当社はこれまで100年超の歴史の中で何をしてきたかと言うと、とてもシンプルです。モーターとその制御に集約されます。私たちが工場を自動化するためにベースとしてある技術がモーターです。ここで工場の自動化という流れがなくなることはないです。では、その自動化のためにモーターを必ず使うのかという部分については、100年経ったら分からないです。

100年後かは分かりませんが、万が一モーターに取って代わるものが何か出てきたら、そこは取りに行きますか?

 もちろん取りに行く。モーターがなくなっても、うちの会社はなくならないですから。 モーターに取って代わるものは絶対に取らなきゃいけない。何十年も前からずっと注目していますが、モーターに代わるものはまだできてきません。

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