米Analog Devices(ADI)が米Linear Technology(LTC)の買収を完了して2年が経過した。同社のCorporate FellowでIEEE Fellowも務める中村勝史氏に統合の状況やアナログ半導体事業の変化について聞いた。(聞き手は三宅 常之)

ADIでは、イノベーションを生み出すため、技術者が多くのアイデアを思いつけるようにするための工夫や、思いついたアイデアを事業化しやすくするための工夫をしているようです。ベンチャーキャピタルの力も活用しているそうですね。

 DSP(Digital Signal Processor)の事業化の例で説明しましょう。1980年代に現在の「DSP」技術のアイデアがADIで生まれました。非常に有望なアイデアでしたが、社内では事業化できる状況にはなかった。当時のCEO(現会長のRay Stata氏)は「絶対に何かがある」と、その可能性を信じていました。そこでベンチャー企業として社外に出して、そこで立ち上げようとしたわけです。ADIとベンチャーキャピタルがそれぞれ出資しました。立ち上げた後に買い戻して社内事業として育んだのです。

当時はアナログ半導体を中核とした企業が、デジタル信号処理技術に基づく、応用事例のない事業を展開することは難しかったと思います。社外に出すことで新しいアイデアの芽をつぶさずにすんだということですね。

 DSPに限らず、ADI内部では実用化まで至らないようなアイデアについては、ベンチャー企業で事業化を目指すことによって、いち早く試作品を生み出します。ADIはベンチャー企業に出資するなどの形である程度の権利を得ておきます。買い戻す際の利益がなくてもその後に事業に貢献するでしょう。こうした事例が社内にはいくつかあります。

ADIの中村氏
1994年に高速コンバーター事業部の上級設計技術者としてADIに入社、組み込み機器用CMOSデータコンバーターの開発に携わった。その後、デジタル画像処理技術の開発リーダー。2011年に民生分野の製品グループでプロダクトライン・ディレクターに就任。2018年より、医療と民生事業ユニットの技術戦略を主導。2005年に民生用画像処理市場での貢献によって同社技術フェロー。米カーネギーメロン大学(Carnegie Mellon University)で電気工学専攻の工学士号、電気およびコンピューター工学専攻の工学修士号と博士号を取得。(写真:日経 xTECH)

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