既存車両をベースにしたOEM(相手先ブランドによる生産)供給を受けることの利点は、開発工数を削減したり、保有していない他社の技術を採用できたりすることだ。一方で、製品に自社らしさを表現しにくくなる欠点も存在する。

 ヤマハ発動機が頭を悩ませたのは、まさにその欠点についてだ。2019年8月に台湾で発売した電気自動車(EV)スクーター「EC-05」は、同社初の電池交換式の車両。台湾ベンチャーのゴゴロ(Gogoro)が現地で生産・販売する車両をベースにしながら、外装デザインでヤマハ発らしさを表現すべく試行錯誤を繰り返した。責任者を務めた新庄正己氏にポイントを聞いた。

(聞き手は窪野 薫=日経 xTECH)

ヤマハ発動機の新庄正己氏
同社MC事業本部戦略統括部、統合戦略部統合戦略グループのグループリーダーで統合PLの職務に従事する。協業全体のヤマハ発側のリーダー(責任者)を務めた。(撮影:日経 xTECH)
[画像のクリックで拡大表示]

ベース車両が決まっており、ヤマハ発らしさを打ち出すのは難しかったはずだ。

 その通りだ。Gogoroが手掛ける「S2」シリーズをベースにし、電池パックやモーターといった基幹部品および足回りを含む車両プラットフォーム(PF)はそのまま使っている。台湾市場で人気があるGogoroの先進的なデザインコンセプトを尊重しながら、ヤマハ発が目指す車両コンセプトをうまく両立させるために検討を重ねた。

 両立は並大抵なことではなかった。そもそも、車両コンセプトで中心に位置付けているものがそれぞれ違う。Gogoroの車両は、エネルギーを中心に置き、クリーンで新しい社会を作っていきたいという思想を前面に出している。そのため、交換式の電池パックを軸に車両を造り込み、ムダなものを極力減らしたスマートなデザインとなっている。対するヤマハ発は、人間を中心に車両を考える伝統を持つ。

どういった外装デザインを目指したのか。

 EC-05はEVスクーターである。後部に搭載したモーターの力強いトルク感が座席の運転者を通り、前方に向かって進んでいくイメージを追求した。これら一連のエネルギーの流れを意識して配色し、フロントカウルやフロントフェンダーといった外装部品を突き出た形状に変更した。ベースのS2と比較しても、前方に向かう力強さが際立っていると思う。

ヤマハ発の「EC-05」、横から
(出所:ヤマハ発動機)
[画像のクリックで拡大表示]

この先は有料会員の登録が必要です。有料会員(月額プラン)は初月無料!

日経 xTECHには有料記事(有料会員向けまたは定期購読者向け)、無料記事(登録会員向け)、フリー記事(誰でも閲覧可能)があります。有料記事でも、登録会員向け配信期間は登録会員への登録が必要な場合があります。有料会員と登録会員に関するFAQはこちら