“日の丸液晶”の期待を背負い、2012年に発足したジャパンディスプレイ(JDI)。しかし創業から6年間、業績の下方修正や赤字決算が続いている。同社の改革を託されたのが、日本コカ・コーラ、デル米国本社、レノボ、アディダスジャパン、ソニー・ピクチャーズ エンタテインメント、ハイアールアジアなど様々なグローバル企業を渡り歩いてきた異色の経営者、伊藤嘉明氏だ。2017年10月に執行役員 チーフマーケティングオフィサー(CMO)としてJDIの経営に参画。2018年4月には自らオーナーとなり、同社発足以来初の社内公募を行い、マーケティング・イノベーションの推進をうたう新組織を立ち上げた。そして同年8月1日、新組織の立ち上げから3か月で得た成果を報道機関向けのイベントで発表した。
 「JDI Future Trip ~First 100 Days~」と名付けた同イベントは“伊藤流”全開。自ら準備の陣頭指揮を執り、本番でも壇上に立ち、全てのプレゼンテーションを原稿なしでこなした。イベント会場は、現役レーサーをゲストに招いたり、趣向を凝らしたビデオや演出を用意したり、社員スタッフ用のそろいのポロシャツから会場の装飾、ニュースリリースを入れたクリアファイルまでを黒で統一して雰囲気を作り上げるなど、同社のこれまでの発表会とは全く異なるスタイル。その中で伊藤氏は「スマートヘルメット」や「IoTドア」など奇抜な新開発品を次々に発表(日経xTECH関連記事:「JDI、ヘルメットメーカーに全否定されながらHUD搭載」同関連記事:「ガラケーに搭載された日立のミラーディスプレー、IoTドアとして復活」)。さらに、B2Cやリカーリングなど新事業への参入を表明した。
 「ヘルメットやドアのビジネスでJDIの業績が良くなるのか疑問」という指摘も多い中で、新たな試みに邁進する伊藤氏に、その狙いや進捗状況、今後の目標について聞いた。

スマートヘルメットを発表するJDI常務執行役員の伊藤嘉明氏(左)
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JDIの改革を託され、2018年4月にマーケティング・イノベーションの推進をうたう新組織を立ち上げました。スマートヘルメットの開発やB2C事業への参入などチャレンジングな発表をしましたが、JDIの改革の“現在地”についてどう認識していますか。

伊藤氏 まだスタートラインにも立っていないと思っています。

 今は、「JDIが持っている技術を、これまでとは違う用途に転用したらどうなるのか」という取り組みが中心です。「全く新しい技術を開発して、何かしよう」という話とは全く違います。今ある技術をどう生かせるのか。なぜ生かさなかったのか。なぜ生かさないと決めたのか。なぜ生かせなかったのか――。そこをもう一回掘り返してきました。

 例えば、鏡が瞬時にディスプレーに変化し、映像情報を鮮明に表示できる「コンシェルジュ機能付きミラー」を今回開発しました。これに、内蔵カメラで撮影した映像を数秒遅れで鏡の一部に表示する「遅れ鏡」の機能も付けました。例えば、確認しづらい後ろ姿のスタイリングを簡単に確認できます。

 鏡がディスプレーに切り替わる技術は、JDIのコア技術を応用したものです。高速の液晶スイッチをディスプレーに搭載したことで実現しました。ハーフミラーを用いた一般的なミラーディスプレーと比べて、高輝度、高コントラストの映像を瞬時に表示することを可能にしています。

 この技術を我々は7~8年前から既に持っていました。私が「なぜこれまでやらなかったのか」と問うと、「それは頼まれていないし」「だって、うちはスマートフォン(スマホ)のパネルメーカーだし」「クルマと関係ないし」という答えが返ってくるわけです。実際、長い間、そういう雰囲気だったんだと思うんですね。

 そこで、「じゃあ、それを(スマホや車載以外の)他の形で実現できないの?」という話をしました。JDIはスマホや車載以外を対象とした「ディスプレイソリューションズカンパニー」を2017年10月に新設しましたが、そこで今回提案した技術が花開くかもしれません。

 今持っている技術や生かしていない部分を発掘することによって、(スマホや車載といった既存事業とは)別の新しい可能性が見えるのではないか。これが、私がCMOとして進めている改革の狙いの1つです。

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