条例ベースにも可能性

和歌山県沖など、今回、洋上新法で促進区域に指定されなかった地域でも、洋上風力の大規模プロジェクトを進めている地域もあります。再エネのデベロッパー(開発会社)の中には、洋上新法を使わずに開発を進める動きもあります。

荒川 そうした動きがあるのは承知しています。一般海域での風力プロジェクトは、洋上新法による枠組みだけではありません。短期の占有許可を自治体が条例で定め、その都度、更新する形で、進めることは可能だと思います。

 ローカルな取り組みの中で、関係当事者がうまく連携することで、ファイナンスセクターの理解を得られる可能性もあります。洋上新法による単線ではなく、複数の枠組みの可能性を残しておいた方がよいとも感じます。

 ただ、大規模な風力プロジェクトの開発には、地域からの合意を形成しつつ、環境影響評価(アセスメント)の手続きなどを進める必要があり、着工までの準備に最低でも5年程度はかかります。こうした地道な活動が求められることには変わりありません。

地域社会への配慮不足のほか、洋上風力発電が国内で発展していくうえでの課題はありますか。洋上新法が動き出す一方で、日立製作所と日本製鋼所が風車製造からの撤退を表明するなど、国内製造業が、いまひとつ盛り上がらない気もします。

荒川 エネルギー政策としての課題は、まさにその点です。洋上新法が施行されても、いったいこの枠組みを使って、どの程度の洋上風力ができるのか、現時点でははっきりしません。政府の掲げている2030年度の「エネルギーミックスの目標(以下、ミックス目標)」では、風力は1.7%で約10GWに過ぎません。

 国内の風力発電の導入量は2017年度末で3.5GW程度で、国として2030年度までに累計で10GWしか見込んでいないというのでは、「日本に風力市場はないですよ」と言っているようなものです。これでは、民間企業は、風力発電設備の開発に投資できません。

 国内の風車メーカーの撤退が相次ぎ、ついに大型風車の国産メーカーがゼロとなってしまったのは、こうした背景があります。

日立製作所製の大型風力発電設備
(出所:日経BP)
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