「拠点港」を巡る駆け引きも

政府は、有望区域を含め、7月末に11カ所もの「促進区域」を一挙に公表し、そのうちの4つだけを「有望」に指定しました。今回、「有望」となることは、それほど大きな意味を持つのですか。

荒川 今回、「有望」となった4区域は、いわば国内洋上風力プロジェクトの“第1期生”とも言えるものです。当然、最初に建設が始まり、それぞれの区域近くに風力設備の部材を組み立てて積み出す「拠点港」が置かれる可能性が高くなります。

 洋上風力を誘致する地域にとってみると、地元に「拠点港」が置かれるか否かで地域経済への波及効果は大きく異なってきます。新たなインフラ投資が必要な拠点港は、国内で数カ所に集約される可能性が高いため、“第一期生”が、その誘致には有利になります。

秋田県北部洋上風力発電事業のイメージ
(出所:大林組)
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 「拠点港」については、今回の4有望区域とは別に、もっと広い視点と地域から、多くの自治体が競い合う中で、決まっていくような形になればと思います。

 そもそも、今回「有望」とされなかった7つの促進区域が、今後、どんな扱いになるのか、現段階ではよく見えません。次年度以降、順次、2期生、3期生として「有望」に格上げされる区域が出てくるのか、どうすれば「有望」になるのかなど、早期に方向性を示してくれれば、次の手が考えられます。

洋上新法による開発の枠組みは、国がゾーニングして必要な許認可を取得してから民間企業に引き継ぐ「セントラル方式」と呼ばれる再エネの開発手法をイメージしています。これは、英国などで採用され、大規模な洋上風力の開発促進とコスト削減に大きな効果があったとされています。果たして日本でもうまく機能するのでしょうか。

荒川 新法によって、初めて一般海域での30年の長期占有が可能になったことで、事業への投資が容易になります。国が主導して、区域を指定して開発をサポートしていく仕組みは、洋上風力プロジェクトを円滑に進めるには効果的に思います。

 こうした国の関与する仕組みの説明に「セントラル方式」という言い方がよく使われます。ただ、漁業関係者など地元住民の視点に立つと、この呼び名は、必ずしも良いイメージを持たれません。というのは、「政府や大手電力会社から押し付けられて場所を提供する方式」と誤解されがちだからです。

 再エネは、常に地域と密着したパワーであり、地元関係者と発電事業者がWIN-WINの関係で、相互に理解する体制を築くことがたいへんに重要です。ただ、地元関係者の事情は、地域によって様々で一律に対応できません。洋上新法が、地元住民に対する「セントラル方式の押しつけ」であってはなりません。

 そのためには、都道府県や市町村に、協議会を含めて、場所や事業者決定に大きな権限を与え、地域への還元などを主体的に決められるようにすることが重要に思います。

 こうした手続きを間違うと、地域との協調、社会的受容性への配慮不足から、洋上風力プロジェクトへの反感が高まり、地元から受け入れられません。

荒川忠一東京大学名誉教授
(出所:日経BP)