小惑星「リュウグウ」の上空に現在滞在中の、宇宙航空研究開発機構(JAXA)の小惑星探査機「はやぶさ2」。2020年末にリュウグウのサンプルを地球に持ち帰ることを目指す。そのはやぶさ2に先駆けて小惑星からのサンプルリターンを果たしたのが、先代の「はやぶさ」だ。そして、はやぶさのプロジェクトを引っ張ったのが、当時プロジェクトマネジャーを務めた現・JAXA シニアフェローで宇宙科学研究所宇宙飛翔工学研究系教授の川口淳一郎氏である。同氏は現在、後進の育成と並行して、はやぶさで培った「電力制御技術」を宇宙以外の分野に広げようと精力的に取り組んでいる。前回は、同氏のバックボーンやはやぶさのプロジェクトに関わるまでの経緯、および失敗談を聞いた。今回は、宇宙以外の分野に向けてどんな活動に力を注いでいるのか、モットーや趣味も含めて聞いた。(聞き手=富岡 恒憲、前編はこちら

撮影:宮原一郎
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 現在、私は、宇宙開発の成果を社会に普及展開する活動に取り組んでいます。宇宙開発を引退したわけではないですが、後進を育てるという理由から、幸か不幸かプロジェクトを引っ張る立場からは離れたので、そうした活動に力を注いでいます。

 宇宙開発の最大の特徴は、全部消耗品だということです。JAXAが手掛けていることは、人工衛星も、ロケットも、全部消耗品です。税金をふんだんに使って、消耗品で使い捨てていく。それでも、宇宙開発は温かい目で見てもらっていると思います。子供たちがそれで喜ぶならいいじゃないかと…。ただ、その一方で、宇宙開発は実社会でどう役に立っているのですかと言われ続けています。ですから、次に何をしようかと考えたとき、そうした活動に思い至ったわけです。

 実は、探査機や人工衛星は、今の流行りの言葉で言うと「ゼロエネルギー住宅」です。エネルギーは全部自身で賄わなければいけない。ブレーカーはありません。では、電力を使い過ぎたときにどうするかというと、自律的な機能があって、通常はそのときに電力を使っている最も切るべきものを切っていくのです。それを切ることで全損を防いでいます。

 ただ、はやぶさのときは、それだけでは不十分でした。はやぶさはイオンエンジンを動かさなければいけないからです。そんなに大電力を消費するわけではないのですが、探査機自体が小さいはやぶさにとっては相対的に大電力です。イオンエンジンを使うには、その一定の電力を確保しなければいけないのです。

 イオンエンジン以外の電力は、消費量が多かったり少なかったりといつもふらふらしています。そうするとイオンエンジンに安定して使える電力は、イオンエンジン以外で最も電力の消費量が多いときの値が基準になります。太陽電池で発生している電力から、その基準の消費量を差し引いた分しか使えなくなります。大きな太陽電池が必要になって質量も増えますから、効率が悪いです。

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