宇宙航空研究開発機構(JAXA)の小惑星探査機「はやぶさ2」が2018年6月27日、小惑星「リュウグウ」に到着した。高度約20kmの地点をホームポジションとして、2019年11~12月にリュウグウを離れるまでリュウグウの観測やサンプル採取に挑戦する。はやぶさ2は、最終的には2020年末に取得したサンプルを地球に持ち帰ることを目指す。こうした小惑星からのサンプルリターンを世界で初めて成し遂げたのが、先代の「はやぶさ」(打ち上げ2003年5月、帰還2010年6月)である。はやぶさは、燃料漏れやエンジン停止、通信途絶など数々のトラブルを乗り越えて満身創痍で帰還した。そのプロジェクトを引っ張ったのが、当時プロジェクトマネジャーを務めた現・JAXA シニアフェローで宇宙科学研究所宇宙飛翔工学研究系教授の川口淳一郎氏である。同氏は現在、後進の育成と並行して、はやぶさで培った「電力制御技術」を宇宙以外の分野に広げようと精力的に取り組んでいる。同氏はどのようなバックボーンを持ち、どのような経緯ではやぶさに携わるようになったのか、またその後は何を目標にどんな活動に取り組んでいるのか、モットーや趣味も含めて聞いた。(聞き手=富岡 恒憲、後編はこちら

 私は、宇宙は昔から好きだったのですが、本格的に宇宙の分野に携わろうと思ったのはずいぶん遅く、大学に入ってからです。何かを掘り下げて専門的にやっていこうという気持ちはずっとあったのですが、選択肢はいろいろありますから…。どういう方向に手を伸ばすべきか決めかねていたというのが正しい言い方かもしれません。小さいころから方向性をしっかりと定めて、目標に向かって努力していく人もいるのかもしれませんが、私の場合は違いました。

 特に興味を持っていたのが動く機械です。今では「メカトロ」と言われることが多いコンピューター制御で動く機構物のことです。結局、私はその一環として宇宙開発を捉えていました。宇宙開発は何でも好きかというと、もちろん関心はありますが、自分が取り組むべきことは、たぶんメカトロの部分ではないかと考えていました。

撮影:宮原一郎
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 これは有名な話ですが、米航空宇宙局(NASA)の「アポロ計画」(月への有人宇宙飛行計画)は数年間続いて、結局そこでいったん終止符を打ちます。そのアポロ計画と並行して、もっと大きな宇宙開発の流れとして存在したのが惑星探査です。惑星というのは木星とか土星とかのことですが、それが本格化するのは1970年代の話です。

 私は、それらに大きな影響を受けます。ロボットとは、無人で動く機械であり、ある機能を成し遂げるものです。その代表が、「バイキング(Viking)」というNASAの火星探査機です。75年に打ち上げられました。

 バイキングは非常に小さな探査機です。1号機と2号機があり、2機連続で火星への軟着陸を成功させます。軟着陸というのは、惑星表面でバウンドしながら着陸するというものとは違います。しずしずと降りていって着陸するもので、難易度の高い着陸と言えます。それが、今から40年以上も前に行われていたのです。

 大きさは、たぶん直径1mくらいのものです。そのバックアップ機が米国のスミソニアン国立航空宇宙博物館に置いてあります。そこにはアンテナが載っていて、直接地球と交信できるようになっています。探査機は、着陸機と火星を周回する軌道船から成るもので、着陸機と軌道船の間で通信を行って、リレーして地球にデータを送ります。古い感じはしないですよね。

 現状でも「日本はできますか」と言ったら、「いや到底できません」という感じのものでしょう。それをその2つの探査機が成し遂げて、さらに有名な実験も行いました。火星の土壌をシャベルですくって、それを温めて生命の存在を探るバイオ実験です。それができたのはロボットのお陰です。

 はやぶさもそうですが、惑星の探査というのは、結局、行ったことがないところで何かをやらなければいけないことを意味します。それは非常に難しいことで、それができることは素晴らしい。そこがスタート地点になって、私も、大学院のときから宇宙に関わることになりました。

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