ヤマハ発動機のロボットシステム「Advanced Robotics Automation Platform」は、1台のコントローラーで複数のロボットを制御する「統合制御」を実現し、従来の「ロボットごとにコントローラーが必要」という常識を打破した(関連記事1関連記事2関連記事3)。工場のスマート化を急ぐ自動車メーカーなどから、多くの引き合いが寄せられる。

 その開発を主導した村松啓且氏(同社先進技術本部研究開発統括部長)は、発想の起点として「面倒臭いのが大嫌い」という自身の性格を挙げる。面倒臭がりだからこそ、何が無駄なのか人一倍分かるのだという。(聞き手は高野 敦=日経 xTECH/日経エレクトロニクス)

Advanced Robotics Automation Platformは、IoT(Internet of Things)や「Industrie 4.0(インダストリー4.0)」のようなコンセプトに対する1つの解であると仰っていたのが印象的でした。

村松啓且(むらまつ・ひろかつ)
ヤマハ発動機 先進技術本部研究開発統括部長。2014年、同社 ビークル&ソリューション事業本部IM事業部ロボットビジネス部長。2017年7月、同事業部FA統括部長。2018年1月より現職。(写真:加藤 康)

村松 将来に向けたコンセプトは重要ですが、同時にそのコンセプトを実現してビジネスを成長させるための手段も同じぐらい大事だと私は思っています。コンセプトと一緒にソリューションを提案していく必要があります。

 特に新しい取り組みにおいては、ロボットに限らず、ユーザーは最初から大規模なシステムにはなかなか手が出ないものです。小さく生んで大きく育てるというか、できるところから始めたい。その過程で成功も失敗もあると思いますが、もし失敗してもそれを糧にまた挑戦すればいい。しかし、最初のハードルが高すぎると、始めることもできません。

 そこで、Advanced Robotics Automation Platformでは、自動化におけるシステム構成要素の最大公約数を取り、必要に応じて欲しい要素を追加できるようにしました。端末を買ってからアプリをインストールするスマートフォンみたいなものです。

もともとロボットに対してそのような問題意識があったのですか。

村松 それは私のキャリアと深い関係があると思います。私は工学部の機械工学系の出身で、最初に就職した時は機械系の技術者として配属されました。ところが、機械系の知識だけでは本当に作りたいものを作れないことが分かりました。自分が作りたいものを設計しても、それを具現化する電気系の技術者が身近にいなかったからです。

 だったら自分でやるかと思って、独学で電気系の開発も始めましたが、最終的にはハードウエアだけでも十分ではないことが分かりました。しかし、こんな動作をさせるためのソフトウエアが欲しいと思っても、周りにそれを書ける人がやっぱりいません。それで今度はソフトウエアの開発を見よう見まねでいろいろとやっていたら、結局、ソフトウエアが一番面白くなりました。

 結局、ロボットのようなモノ、システムを作るときに、技術者としての自分の強みは何かというと、機械機構系・電気電子回路系・ソフトウエア、つまりシステムを構成するさまざまな要素を網羅的に理解していることだと思います。

今、どの企業も欲しい人材像ですね。

村松 通常、最初に機械系、次に電気電子回路、最後にソフトウエアという順番で設計していると、冗長というか、オーバーラップする部分が出てきます。このオーバーラップは、開発リソースだけではなく、最終的にコストにも影響を及ぼします。「本当は機構だけで頑張るよりも、電気的要素を付加した方が簡単なのに」とか、「ソフトウエアでできることを、必要以上に複雑な電子回路で構成しなくても」とか、そういった無駄が結構あります。メカ・エレキ・ソフトの全てが分かっていると、その最大公約数が取れるようになります。

 Advanced Robotics Automation Platformは、その最大公約数を取った汎用ロボットシステムです。無駄な部分は全てそぎ落とされていて、汎用的でありながら、あらゆるアプリケーションに対応できます。ある意味で、私のキャリアの集大成みたいなものです。

裏を返せば、既存のロボットシステムには結構無駄な部分があると。

村松 それは、企業人と一個人で答えが変わってきます(笑)。

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