「Jリーグデジタルアセットハブ」(通称、JリーグFUROSHIKI)。日本プロサッカーリーグ(Jリーグ)が2019年3月に発表したこのシステムは、これまで権利者や管理者がバラバラであった映像や写真のデータを、同リーグが権利を一括所有し、データをクラウドで一括管理するデジタル基盤である(関連記事:さらば“宝の持ち腐れ”  Jリーグ、データ一元管理基盤のインパクト)。Jリーグはこれを、自身でフル活用するとともに他のスポーツにも展開し、日本のスポーツ界の映像配信基盤にする野望を抱いている。開発を手掛けたJリーグメディアプロモーション 代表取締役社長の出井宏明氏と同社 映像事業部 部長の岩貞和明氏に、JリーグFUROSHIKIの開発に取り組んだきっかけや全貌を聞いた。

Jリーグデジタルアセットハブ(JリーグFUROSHIKI)とは、一体何ですか。

出井宏明氏(以下、出井氏):スタジアムに設置した複数台のカメラ映像や、カメラマンが撮影した写真データ、スカウティング映像、競技データまで、そのまま全てクラウドに保管して、必要な映像を必要なときに取り出せるようにするのがFUROSHIKIです。これまで、Jリーグの手元には実際に放映した公式映像しか残っておらず、使わなかった映像は消去していました。米国の取り組みを手本にして、さらに大きく発展させようとするものです。

FUROSHIKIに取り組むきっかけになったのは、2016年にスポーツ動画配信サービス「DAZN(ダゾーン)」を運営する英パフォームグループ(Perform Group)と放映権契約を締結したことがきっかけでしょうか。

岩貞和明氏(以下、岩貞氏):パフォームを含む複数社と放映権の交渉を進めていたのが2016年です。放映権交渉の最大のポイントになったのが、制作・著作の権利の帰属です。Jリーグとして放映権の入札仕様書を作る上で、(試合映像の)著作権を全てJリーグが所有することを前提に交渉を進めていました。

 以前は、撮影した試合映像の著作権は放送局が持ち、我々は独占的二次使用権を頂いて、その映像を他のテレビ局に提供したり、海外に配信したりしていました。

Jリーグメディアプロモーション 代表取締役社長の出井宏明氏(左)と同社 映像事業部 部長の岩貞和明氏(右)。出井氏はJリーグデジタルの代表取締役社長も務める。
(撮影:日経 xTECH)
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MLBやNABの先進事例にならう

岩貞氏:放映権交渉を始める前の準備段階で、海外におけるスポーツ映像の管理・運用について調査しました。特に注目したのは米国です。MLB(Major League Baseball)やNBA(National Basketball Association)を視察しました。

 まずMLBでは、映像を保管するアーカイブについて、専門の担当者がいました。米国内や日本向けの1試合の中継映像を作るためにカメラ10台で撮影した映像を使用、全てのカメラ映像を1年間は保管しています。

 そして2年目には放送した中継映像と10台の中から6台分のカメラ映像を選んで残したり、特別な試合の映像は全て残したりしています。そういった判断を担当者がします。海外向けの中継映像にも担当責任者が置かれていました。

 NBAは、ローカルの放送局が作成した映像の著作権を保有する方式を採っていました。NBAの視察で驚いたのは、試合後すぐに映像にメタ情報を入力していたことです。翌日にはスタッツ(チーム・個人成績)データと一緒に映像データが完成し、アーカイブセンターに収められていました。

 カメラマンが試合会場で撮影した写真もアーカイブセンターにリアルタイムに届けられていて、例えば写真に撮られた選手のシューズのサプライヤー企業に、試合中に写真を配信していました。企業は試合中にその写真を公式SNSにアップロードして商品の宣伝などに使えるわけです。

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