総務省の有識者検討会は2018年7月13日、NHKが2019年度に開始を計画しているテレビ放送のインターネット常時同時配信を条件付きで容認する報告書案をまとめた。解禁には「受信料の体系・水準の見直し」が必要と明記し、受信料の引き下げを求めた。

 年間7000億円という受信料収入で成り立つNHKが、大規模な投資を求められる常時ネット配信に参入することに、放送のCM料を主な収入源とする民放は猛反発したが、「テレビ放送を見る層が少なくなっている今、妥当性がある」と認められ、受信料の軽減やガバナンス強化を前提に容認された。

 AbemaTVやNetflixなど、ネットの動画配信ビジネスは拡大の一途をたどっており、もはや放送局同士で競争している場合でないのは明らか。企業の垣根を越えて将来の放送ビジネスのあり方を考えなければ、座して死を待つのみだ。NHKの同時配信解禁は、日本の放送事業のビジネスモデルを考え直すきっかけにもなる。NTTドコモから政治の世界に入り、現在総務大臣政務官を務める小林史明衆議院議員に議論のポイントを聞いた。

(聞き手は染原 睦美=日経xTECH/日経コンピュータ)

総務大臣政務官を務める小林史明衆議院議員。昭和58年生まれ。上智大学理工学部卒業後、NTTドコモ入社。ドコモでは法人営業と人事の採用担当を経験し、2012年衆院選に公募で出馬し初当選
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2015年から進められていた常時同時配信の議論に、7月13日の報告書案でようやくある程度の結論が出ました。議論の争点となったことを改めて教えてください。

 主な争点は3つありました。一つはNHKの事業構造、つまり国民の受信料で支えられている組織が、その受信料で常時同時配信サービスを提供することの妥当性。もう一つは民放と比べた際の不公平感の払拭。最後の一つは、NHKの肥大化やガバナンスについての議論です。

 1つめの事業構造について、現在はNHKはネット事業を補完事業として位置づけており、受信料収入の2.5%を上限とする予算範囲内でしかサービスを提供できません。常時同時配信を実現するため割合を増やすとすれば、NHKはサービス提供の妥当性を説明する必要がある、という話です。

 2つめは、受信料だけで年間約7000億円の収入があるNHKが、ある種収益度外視でネットの同時配信を手掛けることのビジネス上の不公平感です。民放各局の売上高はおおよそ年間3000~4000億円と、NHKの半分程度です。見逃し視聴など現在のネット事業についても、必ずしも民放各局は成功しているとはいえず、模索が続いています。そこにNHKがさらに受信料という大きな予算を使ってネット事業に参入することに疑義が呈されました。

 3つめは、仮に1つめと2つめの議論で妥当性が認められたとしても、結果としてNHKが肥大化することは問題なのではないか、という議論です。そもそも同時配信の前に、受信料徴収の体制やガバナンスについて見直す必要があるのではないか、という意見が出ました。

今回の報告書案は、これら3つの論点を含め、NHKの常時同時配信には一定の条件下で妥当性があると判断したわけですね。

 そうです。まず、テレビ放送を視聴する世帯が少なくなる一方で、スマートフォンを所有する割合は増えています。公共放送という目的のもと、視聴機会を増やすために、視聴できるデバイスを増やすというのは間違った方向ではないと考えています。その上で、何が問題になるのかということを洗い出し、解決できるよう議論してきました。

常時同時配信に対する視聴者のニーズは高いのでしょうか。例えば英国のBBCでは、ネット視聴のうち同時配信は1割程度、そのほか9割は見逃し視聴といった結果もあります。

 ニーズの観点からいえば、国民の4割が「見たい」と回答したという調査結果があります。一方、ニーズの問題に加え、NHKが公共放送であることも考えに入れなくてはいけません。公共放送は、正しい情報が常に適切に届けられる手段と状況があるべきだと考えています。「災害情報やスポーツなどは同時配信のニーズが高いため、それだけを配信すればよいのでは」という考えは、視聴者のニーズからすればそうかもしれません。一方で、常に見られる環境にしておいてこそ、緊急時など情報を取得すべき時に視聴できるという側面もあります。公共放送の役割の一つに「常に見られる環境を作っておく」ということがある考えています。

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