業績低迷に苦しむNECが社運をかけて変革に挑んでいる。2018年4月に外部人材を副社長に招き、7月には米国に新規事業開発の新会社を設けた。中期経営計画の未達が続くなか、一連の改革は成功するのか。それともまた失敗に終わるのか。新野隆社長にこれまでの「反省」と改革に向けた「覚悟」について聞いた。

(聞き手は大和田 尚孝、竹居 智久=日経xTECH/日経コンピュータ)

4月にGEジャパン元社長の熊谷昭彦氏を副社長に招きました。NECにとって異例とも言える人事を決めた狙いを教えてください。

 私は2016年4月に社長に就いたのですが、その1年目に、この何年かで最も悪い業績になってしまった。しかも世の中の景気が悪かったのではなく、我々だけがものすごく落ち込んだのです。

新野 隆(にいの・たかし)氏
1977年京都大学工学部卒、NEC入社。金融機関向け営業に携わる。金融ソリューション事業本部長を経て2008年執行役員。2011年取締役、最高戦略責任者(CSO)、2012年副社長。経営戦略の立案や新規事業の育成を推進した。2016年4月から現職。福岡県生まれ。63歳。(写真:村田 和聡)
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 業績が悪かった理由を考えた結果、自前主義や大企業病といった悪い体質に原因があるのではと思い至りました。どんどん贅肉がついてスピードが遅くなり、リスクばかりを意識してなかなかチャレンジできない状況になっていた。

 恥ずかしいことですが2016年度から3カ年の中期経営計画を途中で撤回し、2018年度から3カ年の新しい計画を作りました。でも制度疲労を起こしている部分を抜本的に変えない限り、計画を立てても達成できない恐れがあります。

 とにかく外の力を借りてでも、早く我々の文化を変えなければなりません。時間を使えば自分たちだけでも改革はできるかもしれないが、我々にそんな時間は残されていません。

 外部から色々な人に来てもらいましたが、皆さんビックリするんですよね。「NECってこんなに古い会社だったんだ」と。社内でずっと育っている人にとっては当たり前でも、外から見たらとんでもないようなことがたくさんある。

変化という意味では、4月にデータ分析AIの新会社、7月に新規事業開発の新会社を相次いでシリコンバレーに設立しました。

 「NECはいい技術をたくさん持っているのに事業開発力が弱いよね」とよく言われます。確かに世界一とか世界で唯一の技術を持っているけれども、それが大きな事業になっていません。これはスピードに問題がありました。

 特徴のある技術を開発した時、我々は国内の顧客に技術を持ち込んでPoC(概念検証)に取り組みます。そこで技術をどんどん磨き、2年ぐらいかけて良いものにしていく。そうして市場に出せる準備が整ったころには、世の中に同じようなものが出てきていることが多い。技術を開発したころにはダントツでも、2年も経つと追い付かれてしまうのです。特にAI(人工知能)などの分野の動きはものすごく速い。技術をいかにお金に変えるかのやり方を変えなければなりません。

 技術をマネタイズ(収益化)するスピードを速めようと、世界各地で様々な企業が大量に人や金を投じるようになっています。シリコンバレーもそうだし、中国やイスラエルもそう。そんな状況で、日本の中で自分たちだけでやっていても全然追い付かない。

 もし世界一の技術があるんだったら、それを外に出して磨いていけばいいと考えました。新規事業開発を担う「NEC X」を7月にシリコンバレーに設置したのはそのためです。本当に強い技術だったら絶対に化けるはずだし、ダメだったらやめればいい。せっかく国内外に研究所を置いて研究者を抱えているのに、技術の新陳代謝を促して活性化する仕組みが足りなかったんです。

強い技術と言えば顔認証の技術があると思います。顔認証の事業への貢献はどうですか。

 何千万というデータベースから1人をいかに正確に速く認識するかという点で我々の技術はダントツです。絶対に世界で一番になるんだという思いで技術を磨き、1つのブランドとして十分成り立つところまで来ました。

 ただ、課題もあります。ダントツである強みを生かせる応用分野はそれほど多くないんです。少し精度は低くても構わないけれども裾野が広い領域を目指すといったことも考えていく必要があります。顔認証に限らず画像認識の応用範囲はさらに広がるはずです。

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