2016年に医療機器事業を手放した東芝が、再び医療関連事業への参入を目指して動いている。精密医療を新規成長事業の1つに位置付け、従業員のゲノム(全遺伝子情報)データの収集を開始した(関連記事)。研究所で医療関連のテーマを担当した経験を生かして再参入の陣頭指揮を執る、経営企画部 新規事業推進室 室長の米澤実氏に勝算を聞いた。

東芝 経営企画部 新規事業推進室 室長の米澤実氏
(写真:加藤康)
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医療事業への再参入を表明しました。

 2018年11月8日に公表した全社変革計画「東芝Nextプラン」で、「超早期発見」「個別化治療」を特徴とした「精密医療」を中核とする医療事業への本格的な再参入を表明しました。そして2019年5月10日に「東芝の精密医療ビジョン」を示し、具体的なアクションへの移行を表明したのです。

 精密医療事業を本格的に推進するために、「精密医療ビジョン」を新たに作成しました。具体的には(1)「一人ひとりのクオリティ・オブ・ライフ(QOL)の向上を応援します」、(2)「積み重ねた技術力と、新たなパートナーシップでこれからの先進医療・ライフサイエンスを支えます」、(3)「次の世代も見据えた予防医療にデジタルの力を活かします」の3つを目標としています。

東芝からはさまざまな事業が外部に出ていきました。医療関連では何が残っているのでしょうか。

 全体で見れば、白物家電の製造・販売や映像事業を担ってきた「東芝ライフスタイル」や、半導体メモリーなどを製造・販売する「東芝メモリ」などが売却されたのはご存じの通りです。ヘルスケア分野に限れば、医療機器を製造・販売していた「東芝メディカルシステムズ」のほか、リストバンド型生体センサー「Silmee」の事業などを手放しました。

(写真:加藤康)
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 逆に残ったものとしては「重粒子線治療装置」があります。その他にも、医療画像診断機器で培ったデータ分析や機械学習、AI(人工知能)などのノウハウや技術そのものは残っています。

 研究開発を進めていた事業の卵となる基盤技術もあります。それは手放した医用画像機器(モダリティ)やウエアラブル端末とは異なる領域で進めていた研究開発で、例えば「マイクロRNA」や「生細胞可視化」、「リポソーム」などに関する要素技術が挙げられます。

 我々の目指す精密医療は、各個人に最適な医療を提供するものです。予防・検診・診断・治療という各ステージで、それぞれの患者や未病の人にいろいろな選択肢を提供できる状態こそ、「精密医療が実現されている」と私は考えています。

 この選択肢の中には、データに基づき患者をグルーピングして、そのグループにあった医療を提供する「層別化医療」もあるでしょう。そういった意味で、さまざまな技術を組み合わせて社会実装していくとともに、それぞれの技術が医療事業として成り立つように実装していく必要があると思います。

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