Ethereum(イーサリアム)は、Bitcoin(ビットコイン)に次ぐ時価総額2位の暗号通貨を運営するパブリックブロックチェーンだ。

 デジタルトークンの発行で資金を調達するICO(Initial Coin Offering)でトークン発行基盤として使われるほか、Ethereumプロジェクト自体もICOで資金を調達した。

 Ethereumプロジェクトの立ち上げに関わった香港Input Output(IOHK)創業者CEO(最高経営責任者)のチャールズ・ホスキンソン(Charles Hoskinson)氏に、Ethereum設立の経緯とICOの利点・欠点について話を聞いた。

(聞き手は浅川 直輝=日経 xTECH/日経コンピュータ



Ethereumプロジェクトに関わるきっかけは。

香港Input Output(IOHK)創業者CEO(最高経営責任者)のチャールズ・ホスキンソン氏
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 元々は起業家になる考えはなく、米コロラド大学ボルダー校で研究者を目指して勉強していた。2013年ごろからサイドビジネスで暗号通貨の教材を作っていたが、それをきっかけに多くの暗号通貨業界の人々と知り合った。後にEthereumを立ち上げるアンソニー・ディ・イオリオ(Anthony Di Iorio)やヴィタリック・ブテリン(Vitalik Buterin)とも、この頃に知り合った。

 ヴィタリックほか数人は当時、コンピュータサイエンスの実験の一環として、Ethereumの元となるプロジェクト(Primecoinのオーバーレイプロトコルの開発)を進めていた。その後、専用のブロックチェーンを開発する方向に舵を切り、私はそのために必要な法人の設立や運営を担うことになった。

 Ethereumは様々な「創業者」がいた。テクノロジーサイドの創業者と、ビジネスサイドの創業者だ。このうちテクノロジーサイドの創業者と言えるのが、ヴィタリック、ギャビン・ウッド(Gavin Wood)、 ジェフリー・ウィルケ(Jeffrey Wilcke)の3人だ。

 ヴィタリックはまず、Ethereumのアイデアを、ホワイトペーパーとして2013年にWeb上で公開した。1990年代にニック・サボ(Nick Szabo)が提唱した、契約をプログラムとして記述する「スマートコントラクト」という概念を、ブロックチェーンの分散環境で実現するというものだ。
 
 続いて2014年4月、ギャビンがそれを精緻化したイエローペーパーを書いた。初期のソースコードについてもほとんどはこの3人が書いた。

 ビジネスサイドの創業者は4人。このうちアンソニーとジョセフ・ルービン(Joseph Lubin)が開発資金を最初に提供し、ビジネスに関する専門知識や人脈を提供した。私はテクノロジーサイドとビジネスサイドの間でバランスを取る役目だった。だがその後、組織の形態や資金調達の手法で、両サイドの意見の食い違いが明らかになった。

営利か非営利か、VCかICOか

どのような食い違いがあったのか。

 ヴィタリックをはじめとするテクノロジーサイドのメンバーは、Mozilla FoudationやLinux Foudationのような非営利の組織でプロジェクトを進めようと主張した。ビジネスサイドは営利組織、今で言う米リップル(Ripple)のような企業の設立を目指していた。

 当初はプロジェクト推進の組織をスイス法人として登記していた。営利組織としてVCから資金を受け取ってスイスに事業体を集中させるか。それとも非営利の財団とし、拠点も分散させるか。メンバーの間で議論が長く続いた。

 僕は非営利組織、営利組織の双方について準備を進めつつ、営利組織になることをプッシュした。なぜなら、この時点で構成メンバーが急激に膨れ上がって100人近くになっており、企業体として統制する必要があると感じていたからだ。

 2014年6月、ヴィタリックは最終的に非営利組織でやろうと決断した。Ethereum Foundationをスイスで立ち上げたのだ。

 この結果、営利組織を目指していたメンバーはプロジェクトから離れた。ジョセフは後に、Ethereum上でスマートコントラクトを開発する米コンセンシス(ConsenSys)を創業。アンソニーはウォレットアプリ「Jaxx」を開発する加ディセントラル(Decentral)を立ち上げた。

 僕もプロジェクトを去って、暗号通貨の研究と技術開発を手掛ける香港IOHKを創業した。後にEthereumから分岐した「Ethereum Classic」の開発をボランティアで引き受けているほか、時価総額で世界7位の暗号通貨「Cardano(カルダノ)」のプロトコルやソフトウエアの開発を請け負っている。かつてのゴールドラッシュででもうかったのはツルハシを販売する企業、という話があるが、ブロックチェーンサービスではなくサービスに必要なツルハシを販売する企業、というわけだ。

 Cardanoは数ヶ月後には次期バージョン「Shelly」を公開する予定だ。現行のバージョンはリップル同様、特定のノードのみコンセンサスに関わる。次期バージョンからはノードの制約がなくなり、真の分散型ブロックチェーンになる。

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