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 数多くのSF(サイエンス・フィクション)小説や映画作品に描かれてきた、人間のように人と対話するAI(人工知能)――。AIの開発や導入は各所で進むが、こうしたAIはまだ実現していない。対話システム研究の現状とこれからの青写真を、日本電信電話(NTT) NTTコミュニケーション科学基礎研究所 兼 NTTメディアインテリジェンス研究所 知識メディアプロジェクト 知識言語基盤技術グループ 主任研究員(上席特別研究員)の東中竜一郎氏に聞いた。(聞き手は内山 育海、東 将大=日経 xTECH)

最近の対話システム研究開発トレンドについて教えてください。

 対話システムには2つのタイプがあります。まず、いわゆるAIスピーカー(スマートスピーカー)に代表されるような、ユーザーが何かお願いをすると応えてくれる「タスク指向型」。米アマゾン・ドット・コム(Amazon.com)の対話エージェント「Alexa(アレクサ)」がかなり先行しています。もう1つが、「非タスク指向型」と呼ばれるタイプです。このタイプは、おしゃべりや雑談ができるエンターテインメント性や、ユーザーがシステムと「仲良くなれる」ことを重視します。

 タスク指向型は(手間をかけて)作りこめば実現できるところがあるので、ビジネス向けで開発が進む一方、研究では後者のタイプ、雑談対話システムの開発が盛んです。特に、AI分野のトップ国際学会「IJCAI(International Joint Conference on Artificial Intelligence)」では、ほとんどの論文が、入力発話に対する応答をディープラーニング(深層学習)で生成、出力するシステムに関するものになってきています。

日本電信電話(NTT) NTTコミュニケーション科学基礎研究所 兼 NTTメディアインテリジェンス研究所 知識メディアプロジェクト 知識言語基盤技術グループ 主任研究員(上席特別研究員)の東中竜一郎氏
(日経 xTECHが撮影)
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雑談対話システムの現在の研究課題は何でしょうか。

 特に最近の流行りは、一貫したキャラクターで応答するやり取りをどう実現するかです。日々のアシスタントのような対話システムを考えたときに、ずっと長く使ってもらうためには、仲間感や信頼感を持てるかどうかということが重要になります。

 対話機能を実現するために大量の人の雑多なデータを学習させると、いろいろな人の個性や価値観が混ざったシステムになってしまいます。一度「好き」と言ったものを後で「嫌い」と言ってしまったり、出身地が聞くたびに変わってしまったりすると、文脈の一貫性を壊すことにつながります。実際、機械学習のトップ国際学会「NeurIPS(旧NIPS) 2018」では、米フェイスブック(Facebook)が中心となって、チャットボットの一貫性を評価するコンペ「The Conversational Intelligence Challenge 2 (ConvAI2)」を実施しました。ボットの学習には、与えられたプロフィール(ペルソナ)に基づいて話す人間同士の対話データを利用しています。