2018年に大きな話題となったVTuber(バーチャルYouTuber)。その数は2018年12月時点で6000人を超えた。既に様々な企業で公式VTuberが誕生したほか、テレビ番組やタイアップCMに出演したり、音楽ライブを開催したり、観光大使に任命されたりと、その活動の幅を大きく広げつつある。では2019年にVTuberはどのような存在になっていくのか。ここでは前後編の2回に分けて、SHOWROOMのCTO(最高技術責任者)である佐々木康伸氏に、2019年のVTuberの未来と、同社のVR事業の今後や業界の展望を語ってもらった。同社は配信サービス以外にもVTuberオーディション企画の実施やVTuber配信アプリの公開といった取り組みでよく知られている。前編では、主にVTuberの未来について取り上げる。(聞き手は東 将大=日経 xTECH、後編はこちら


SHOWROOM CTOの佐々木康伸氏
ITベンダー企業を経て2008年にモンスター・ラボに入社し、同社の音楽配信サービスやソーシャルアプリを開発。2010年、DeNAに入社。「Mobage」(モバゲー)の開発・運用や、音楽アプリ「Groovy」の開発に携わる。2013年にSHOWROOM代表取締役社長の前田裕二氏と配信サービス「SHOWROOM」を立ち上げ、2015年にDeNAから分社化。2018年からバーチャル事業を本格的に進める。(撮影:日経 xTECH)
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そもそもVTuber(バーチャルYouTuber)とはどのような存在なのか。

 VTuberは主に動画配信サイトを活動の場とするデジタルキャラクターだ。2次元または3次元(3D)のCGで作られたアバターの姿で活動する。その本質は自己表現であり、ブログやSNS(ソーシャルネットワークサービス)と並び、企業と個人のどちらも手にすることができる新しいメディアの形だと思っている。バーチャルだからこそ制約が少なく、全く新しい表現ができるほか、特に個人では、これまでコンプレックスを抱えた人の裏に隠れていた才能を掘り起こすきっかけにもなる。

才能を掘り起こすとはどのようなことか。

 リアルな人間は、見た目や性別など、持って生まれた「ハードウエア」にどうしても引きずられてしまう。例えば、実は話が上手で面白いのに、自分の姿にコンプレックスがあって会話の場に立てない人がいたとする。アバターの姿になれば、コンプレックスを気にせずコミュニケーションできる可能性が高まる。これまでも、ブログやSNSのおかげで交流しやすくなった人は多いはずだ。そういった人がアバターを持つことで、埋もれた才能を表に出すきっかけになるかもしれない。

VTuberは2018年12月時点で6000人を超えた。2019年はもっと増えそうだが。

 アバターを持って活動する人は、今後も増えていくだろう。ただ、これまでのような単なるVTuberという存在は減ってきて、バーチャルシンガーやバーチャルアイドルのような、具体性を持ったカテゴリーの存在に移っていくのではないかとみている。

活動するジャンルが細分化されていくのか。

 そう予測している。現時点でもVTuberの数が非常に増えてきており、既に個性を出していかないと売れなくなってきている。この状況から脱するために、歌唱や演奏など自身の一芸を売りにして活動するVTuberが増え始めている。すると、根の部分はVTuberとしてくくられても、「バーチャル×何か」という新しい呼び方が生まれて、専門分野ごとに細かく分かれていくだろう。例えば、バーチャル記者という存在もその1つだ。

バーチャル記者以外にはどういった仕事に活動範囲が広がっていくのか。

 芸能関係だ。既に多くのVTuberが始めている。例えば、生身のタレントのように広告に出てプロモーション業をしている。このほか、これから増えていくと考えているのは、よりB2B向けの仕事だ。例えば、店員がアバターの姿で接客するバーチャル店員やバーチャル心理カウンセラー、バーチャル家庭教師やバーチャル教師など、専門技能を持ったプロフェッショナルがアバターの姿を持つようになる可能性がある。

 加えて、そういった仕事を活動にしていければ、VTuberとしての市場を拡大できる可能性が高い。今のVTuberは動画配信がメインになっているが、それ以外の仕事の方が世の中には多いからだ。

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