東京都が2017年9月に策定した「都市づくりのグランドデザイン」は、2040年の近未来をターゲットとし、持続可能性を重視しながら分野横断的な挑戦を指向する内容となっている。今後どのような街をつくり、次世代に引き継ごうとしているのか。前編(「新技術でも常にイニシアティブを取りたい」)に続き、小池百合子・東京都知事に聞く。

(聞き手は山本 恵久=日経 xTECH/日経アーキテクチュア、大石 基之=日経 xTECH編集長)

「無電柱化」も技術革新のチャンス

日経 xTECHのインタビューに応じる小池百合子・東京都知事(撮影:澤田 聖司)
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建築メディア「日経アーキテクチュア」の調査で、東京23区における延べ面積1万m2以上の建築物など大規模開発プロジェクトは建設のペースを緩めず、1年前の調査と比較して建設中の総面積が2割ほど増加していると分かりました。こうした精力的な都市機能の更新に関し、東京都として最も注力している点、注意を払っている点はどのような事柄になりますでしょうか?

 これから日本は超高齢社会に向かっていくわけです。それとパラリンピックの開催という機会を併せ、ぜひバリアフリー化を徹底して進めていきたい。東京は1964年に続き、今回オリンピックとパラリンピックを同時開催します。2回経験する都市というのは東京が初めてなんです。そうした事実も踏まえると、成熟都市・東京、超高齢社会・東京へと変えていくためにバリアフリー化というのは良い目標であり、今回が良いきっかけになると思っています。

 段差をいかにして無くしていくかという点において、「その大きなきっかけになったよね」というふうに後世からも言われるようにしたい。それは道路における段差のみならず、例えば、地下にある駅まで車椅子でも地上から一気通貫で降りられるとか。さらに、そのまま車椅子でもトイレに入れるとか、街の全体に及ぶものです。

 それと同時に私は以前から「無電柱化」に、ずっとこだわってきました。阪神・淡路大震災の時に電柱が倒れることによって救急車や消防車の行く手が阻まれました。そうした問題もあって、私自身は以前から電柱に対して違和感を持っていたんですけれど、これも一気に進めていくようにしたい。

 無電柱化に関しては、国の法律(無電柱化の推進に関する法律、2016年12月施行)案をつくったのも私ですし、都知事になってから今度は、東京都の条例(無電柱化推進条例、2017年9月施行)をつくりました。国と、地方公共団体である東京都の両方から攻めているところです。

 私は、これこそ技術革新のチャンスだと思っているんですよ。これまでは、架空(がくう、空中配線の意味)という電線をどうやって守るか、その被覆の技術の開発があったわけです。では今度、それを地下に移す場合に、どうやって水から守るか。活断層のある場所や、液状化の起こる場所で地震があったら、どうやって断線しないようにするか。いろんな技術を必要としていますので、無電柱化という目標によって技術の開発が促されるのではないかと思っています。

東京都が2017年9月に策定した「都市づくりのグランドデザイン」に記されている「都市づくりの挑戦」。「道路や鉄道のピーク時の混雑」の解消策の一つとして自動運転技術の普及・活用が挙がっているほか、「都内の無電柱化」に関しても具体的な目標を掲げている(出所:東京都)
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交通インフラの整備によって、東京は、横浜や大宮など近郊都市を合わせた従来以上の大都市圏を形成しつつあります。一方で、より個性の強い小さなエリアの多様性を大切にしなければ、都市としての国際的な競争力を持ち得ないように感じます。この点で、都市づくりを今後どのようにリードしていきたいとお考えでしょうか?

 今それぞれの地域のカラーを生かした開発が行われているところだと、むしろ私は思っています。

 私は池袋の辺りに住んだ経験があるんです。例えば、その池袋ではこれから、まず東京都の芸術劇場がある西口側の広場などが変わります。そして、西武(池袋本店)のある東口側も、旧区役所の跡地が大きく様変わりします。そこに出来るメーンの劇場(2019年開業予定)ではこけら落としに宝塚歌劇と歌舞伎を予定しているそうで、ほかにサブの劇場が周りに幾つか出来ます。高野区長(高野之夫・豊島区長)の非常に熱い思い入れにより、「国際アート・カルチャー都市構想」の下に徹底して変わるのが池袋なんですね。

豊島区池袋の旧庁舎および旧公会堂の跡地整備プロジェクトの計画イメージ。超高層オフィスのほか、年間650万人を集客目標とする劇場・ホール群(2020年完成予定)、および新区民センター(2019年完成予定)を建設している(出所:東京都)
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 そして池袋駅の周辺というのは、ハロウィンもそうなんですけれど、コスプレの聖地でもあるんです。それで、わざわざ着替えの場所を用意している(注)。豊島区には、そうやってサブカルを育てていく姿勢があるわけです。

注:劇場と共に整備される新区民センターに、女性目線の大規模トイレや着替え用ブースを設ける計画となっている

 池袋の場合、秋葉原の「萌え」とは、またちょっと違うんですよ。コスプレを楽しむ女の子が、いつもちっちゃなキャリーバッグを引っ張って歩いている。秋葉原が男の子の街だったら、池袋はむしろ女の子の街なんですね。共通するのは、漫画やアニメなんですけれど。

小池百合子・東京都知事(撮影:澤田 聖司)
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